2006 Fiscal Year Annual Research Report
光解離性修飾基を利用したタンパク質のフォールディング反応の追跡
Project/Area Number |
18031038
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
廣田 俊 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (90283457)
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Keywords | 蛋白質 / 光解離性修飾基 / 蛋白質修飾 / 化学修飾 / フォールディング / 光反応 / 構造形成 |
Research Abstract |
蛋白質のフォールディング反応に関して、ストップドフロー法を用いた研究により比較的遅い時間帯での情報は多く得られている。しかし、ストップドフロー法の不感時間内である1ミリ秒よりも早い時間領域での知見は依然少なく、このフォールディング反応の初期過程を観測できる新しい研究手法が待ち望まれていた。そこで、本研究では、蛋白質から光解離する修飾基を用いて、光で蛋白質のフォールディング反応を開始させる新規な手法を提案している。また、本手法を応用して、複合体形成による蛋白質の構造変化の追跡を目指している。本年度は以下の成果を得た。 1.アポプラストシアニンの修飾蛋白質は未修飾蛋白質より不安定であることが解った。そこで、修飾蛋白質どうしの相互作用による変性を防ぐため、修飾を行う濃度は低め(10μM以下)にし、反応時間をできるだけ短くする(45℃で10分程度)ことが良いことが判明した。 2.本手法を応用して、細胞内シグナル伝達タンパク質であるphosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)のSH3ドメインとSH3ドメインで認識されるペプチドであるRLP1ペプチド(RKLPPRPSK)との分子認識の光制御を試みた。RLP1ペプチドを環状にするために、RLP1の両端にCysを付加させたペプチド(CRKLPPRPSKC,C-RLP1-C)を作り、両端のCysを新規光応答性架橋剤2,5-bis(bromomethyl)nitrobenzeneで架橋した。得られたペプチドの分子量はm/z=1473.76であり、Cysが2-nitrobenz-1,4-diylで架橋されたペプチド(modC-RLP1-C)の理論分子量(m/z=1473.75)とよい一致を示した。さらに、エルマン試薬によってmodC-RLP1-CからはSH基が検出されず、両端のCysが修飾されていることが示された。プルダウンアッセイにより、環状のmodC-RLP1-CペプチドはSH3ドメインと相互作用しにくいが、modC-RLP1-Cに光を照射すると、SH3ドメインとの相互作用が強くなることが解った。さらに、modC-RLP1-CをSH3ドメイン共存下で紫外光照射すると、SH3ドメインのαヘリックス由来のCDバンドの強度が減少し、SH3ドメインの芳香族アミノ酸由来のCDバンドの強度が増大した。以上のことから、本手法を用いてSH3ドメインの分子認識を光制御できることが示された。
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Research Products
(1 results)