2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18032025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福沢 世傑 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (40321806)
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Keywords | スナギンチャク / ノルゾアンタミン / 骨粗鬆症 / コラーゲン / 保護作用 / カビ / 石灰化 / ハイドロキシアパタイト |
Research Abstract |
スナギンチャク(Zoanthus sp.)は刺胞動物の一種で、コレステロールに匹敵する量のノルゾアンタミンを含み、そしてそれは細胞毒性をほとんど示さない。一つの可能性として共生微生物が生産し、それをスナギンチャクが貯蔵することで自らの生存に役立てているとの作業仮説を立て、質量分析を用いたスクリーニングによりスナギンチャクに共生しているカビAspergillus fumigatusが産生していることを明らかにした。スナギンチャクの組織を直接レーザーで照射してノルゾアンタミンをイオン化する(MALDI-MS)ことでその分布を調べたところ、ノルゾアンタミンは主に白色の表皮組織に分布していた。よってノルゾアンタミンはカビが産生し、それをスナギンチャクの表皮組織に貯蔵していると考察した。一方、ノルゾアンタミンはマウス由来I型コラーゲンを基質として、コラゲナーゼによる酵素反応を行ったところ、その酵素活性を抑制した。さらに石灰化のモデル実験を行ったところ、溶液中でハイドロキシアパタイトの析出を増大させており、ノルゾアンタミンはコラーゲンを核としたハイドロキシアパタイトの形成を促進することがわかった。よって、ノルゾアンタミンの骨強度および骨密度増大作用はコラーゲンの分解抑制にその生物活性の根拠の一つを与えた結果となった。コラーゲンとノルゾアンタミンを共存させた状態で一定時間紫外線照射による外的刺激を与え、SDS-PAGEによってタンパク質の状態を調べたところ、ノルゾアンタミンの添加がコラーゲンの分解を抑制した。潮間帯に生息しているスナギンチャクは直射日光にさらされており、紫外線照射によって生じる様々な活性酸素種から身を守るためにノルゾアンタミンを鎧のように身にまとっていると考えた。そしてこの知見は報告されている骨強度および骨密度増大作用の作用機序にひとつの答えを与えている。
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