Research Abstract |
発がんプロモーターの受容体であるプロテインキナーゼC(PKC)には,10種のアイソザイムが存在する.放線菌の産生するindolactam-V(1)は,nMオーダーでPKC C1ドメイン(C1A,C1B)に結合する.昨年,本研究代表者らは,1とPKCδのC1Bとの結合において,インドール環とC1Bの11番目のプロリン残基(Pro-11)が,CH/π相互作用することにより結合能が高められていることを明らかにした.Pro-11は,すべてのC1ドメインに保存されていることから,C1ドメイン間のCH/π相互作用の差異を利用して,novel PKC(δ,ε,η,θ)選択的な薬剤の開発を試みた.これまで,1のインドール環の1位にアルキル側鎖を導入することによって,絶対的な結合能を低下させることなく,novel PKCのC1Bへの結合選択性が向上することが明らかになっている.そこでさらに選択性を高める目的で,9員環から10員環に環拡大することによって,Pro-11に対するインドール環の空間的位置を変化させた1-hexyl-indolactam-V10(2)をデザインした.化合物2は,4-nitroindoleより14段階,総収率4.1%で合成した.化合物2の各C1ペプチドに対する結合能を1と比較したところ,1がconventional PKC(α,β,γ)のC1Aとnovel PKCのC1Bに5〜30nMの結合定数で強く結合したのに対して,2はnovel PKCのC1Bに対してのみ1と同等の高い結合能を示した.さらに,2による各PKCアイソザイムの細胞内局在性の変化を調べたところ,2は500nMの低濃度でHeLa細胞において,3種のnovel PKC(δ,ε,η)を選択的に細胞質から細胞膜に移行させて活性化することが明らかになった.
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