Research Abstract |
発がんプロモーターの受容体であるプロテインキナーゼC(PKC)には,10種のアイソザイムが存在する.個々のアイソザイムは,様々な疾患に関与していることから,アイソザイム選択的な薬剤の開発が強く求められている.放線菌の産生するindolactam-V(1)は,nMオーダーでPKC C1ドメイン(C1A,C1B)に結合する.本研究代表者らは,1とPKCδのC1Bとの結合において,1のインドール環とC1Bの11番目のプロリン残基(Pro-11)が,CH/π相互作用することにより結合能が高められていることを明らかにした.Pro-11は,各PKCアイソザイムで空間的位置が異なると考えられることから,C1ドメイン間のCH/π相互作用の差異を利用することにより,PKCアイソザイム選択的な薬剤の開発が可能である.各アイソザイムでのCH/π相互作用を変化させるため,1のインドール環の1位あるいは12位に各種アルキル側鎖を導入した.これらのPKCアイソザイムへの結合能を,本研究代表者らが開発したPKC C1ペプチドを用いて評価したところ,1位に嵩高いイソプロピル基を導入することによってnovel PKC(δ,ε,η,θ)に対する選択性が顕著に増大すること,逆に12位においては立体障害の小さい直鎖の置換基がnovel PKCに対する選択性を高めることが明らかになった.各種PKCアイソザイムのC1ドメインのPro-11を4,4-difluoro-prolineで置換したペプチドを用いた結合試験を行ない,1-isopropyl-indolactam-Vのnovel PKC選択性の一部は,アイソザイム間でのCH/π相互作用の相違に起因することを明らかにした.さらに,このCH/π相互作用に着目して,ピロロインダゾール環を有する新しい蛍光プローブの合成にも成功した.
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