2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18032042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上杉 志成 京都大学, 化学研究所, 教授 (10402926)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / ケミカルジェネティクス / 生理活性小分子化合物 / ビオチン / 標的タンパク質 |
Research Abstract |
生命現象を解明するために、生理活性小分子化合物はさまざまな形で利用されてきた。その中で最も直接的な利用法は、化合物の標的タンパク質を精製・同定することだろう。しかし、標的タンパク質の生化学的精製は困難を極める作業であり、その成功率は低い。本研究の目標は、成功率を向上させる方法を開拓することである。 化合物の標的タンパク質精製は「釣り」に似ている。一つの方法は、ビオチン化化合物を用いる精製法である。ビオチン化した化合物をアビジンアガロース担体に結合させ、化合物のアフィニティー担体をつくり、標的タンパク質を細胞抽出液から釣り上げてくる。研究代表者らはこのような精製を繰り返し行う中で、化合物とビオチンをつなぐリンカーの形状や物性が重要ではないかと考えた。 そこで、釣りから学び、釣竿状の分子をリンカーとして用いた。釣竿は餌を遠くへ飛ばし、釣り糸が絡むのを防ぐ。釣竿のような物質をリンカーとして用いれば、化合物をアビジン担体から十分に遠ざけて大きなタンパク質やタンパク質複合体の精製が可能になり、リンカー部分が絡んで非特異的相互作用を起こすことが少なくなるだろう。 原理の証明のため、われわれが「釣竿」として取り上げたのはポリプロリンである。プロリンが連続すると、左巻きのヘリックスが真直ぐに伸びた釣竿状の物質となる。実際に、各種の既知化合物に9個のプロリンからなる27Åの釣竿をつけると、標的タンパク質の細胞抽出液からの回収率が格段に良くなることを証明した。この結果をまとめた論文は、J.Am.Chem.Soc.誌に発表された。 今後、この「釣竿法」をさらに改良し確立させる。そして、特定研究で発見されたり合成される化合物の標的タンパク質決定に活用したい。
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