2006 Fiscal Year Annual Research Report
複素芳香族化合物の触媒的不斉水素化:多不斉中心の同時立体化学制御
Project/Area Number |
18032056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (20273477)
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Keywords | ルテニウム触媒 / 触媒的不斉合成 / 夫斉還元 / 不斉水素化 / 複素芳香族化合物 / ピロール / ピロリジン / 複素環 |
Research Abstract |
現在、触媒的不斉水素化は優れた光学活性化合物の供給法として認識され、実験室レベルのサンプル供給から化学産業における商業的製造まで広範囲に利用されている。しかし、今までにオレフィン、ケトン、イミンの触媒的不斉水素化には数多くの成功例が報告されてきたが、ベンゼンやピリジンのような芳香族性をもつ不飽和官能基の触媒的不斉水素化の研究例は最近までほとんどなかった。そこで、この研究では未だに報告例がない複素芳香族化合物ピロールの触媒的不斉水素化において高いエナンチオ選択性を達成すべく研究を開始した。 まず、前年度までに76%eeの立体選択性を達成したピロール-2-カルボン酸メチルの触媒的不斉水素化について更なる反応条件、不斉触媒の検討を実施したところ、Ru(η^3-methallyl)_2(cod)と不斉配位子(S,S)-(R,R)-PhTRAPから反応系中で調製したルテニウム錯体を不斉触媒とし、トリエチルアミンを添加し、2-プロパノール中、水素圧50気圧、反応温度60℃で反応を実施することにより、鏡像異性体過剰率79%eeで3体のプロリンメチルエステルをほぼ定量的に得ることに成功した。 次に、2,3,5-三置換ピロールの触媒的不斉水素化について検討したところ、5位に大きな置換基をもつピロールを基質として用いた場合に最高96%eeで三つの不斉炭素原子をもつ光学活性ピロリジンを単一のジアステレオ異性体として得ることに成功した。この反応では、基質の5位に大きな置換基を配置することが重要であり、2位や3位にしか大きな置換基をもたない基質では最高でも75%ee程度のエナンチオ選択性しか発現しなかった。 以上の成果は、ピロールの高エナンチオ選択的触媒的不斉水素化の世界初めての例であり、その学術的意義は極めて大きい。
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