2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規血管新生阻害剤ブリヨアントラチオフェンの合成と高機能化
Project/Area Number |
18032058
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 智文 Kyushu University, 大学院・薬学研究院, 准教授 (40182050)
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Keywords | bryoanthrathiophene / チゴケムシ / 血管新生阻害 / HUVEC / hydroxymethylanthrathiophene / 天然物合成 / knoevenage1 反応 / 触手動物 |
Research Abstract |
海産触手動物チゴケムシ(Watersipora subtorquata)から血管新生阻害剤として単離・構造決定したbryoanthrathiophene(BATP)を出発原料に1,8-dihydroxyanthraquinone(DHAQ)のニトロ化後、チオグリコール酸メチルの求核付加によりチオエーテル体を合成し、更にknoevenagel反応により収率10%でmethylanthrathiophene(MATP)を合成した。次にMATPをDIBAL-HもしくはLiAlH4でhydroxymethylanthrathiophene(HMATP)に還元した後、ヒドロキシ基をハロゲン置換しクロル体(C1ATP)、プロム体(SrATP)を合成した。最後に、これらハロゲン置換体をNaBH4で還元し目的化合物であるBATPを合成した。合成したBATPと天然物のlH-NMRおよびMSスペクトルは完全に一致した。今回合成したBATP及び合成中間体、副生成物計20種の化合物についてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する増殖阻害活性を検討した。その結果、目的化合物であるBATPに内皮細胞増殖阻害活性は認められず、HMATPがIC50=0.3μM、C1ATP及びBrATPがそれぞれIC50=1.5μMで顕著な増殖阻害活性を示した。この結果より、天然物のBATPに微量活性成分が混在していた可能性が考えられたことから、天然物のlH-NMRスペクトルを精査したところ、約10%HMATPが含まれていた事が明らかとなり、BATPの血管新生阻害活性はこのHMATPによるものと結論した。しかし、天然物が塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)に特異的な阻害作用を示したのに反し、HMATPは内皮細胞増殖因子(VEGF-A)には特異性を示さなかった。このことはそれぞれの増殖因子受容体チロシンキナーゼの違いによるものと推定され、HMATPはアデノシン3リン酸(ATP)に競合的に作用することで血管新生のシグナル伝達を阻害すると考えられる。以上の研究成果は合成研究において天然微量活性成分が発見された極めてまれな例であり、今後合成した活性成分の更なる高機能化、作用メカニズムの解析を行う予定である。
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