Research Abstract |
反転糖を含んだエラジタンニンの全合成研究を目的とした研究の中で,以下の成果を得た。まず,反転糖を用いた高β選択的なグリコシル化反応を開発した。また,離れた位置の没食子酸部分を環反転によって反応点を近づけ,ヘキサヒドロキシジフェノイル基の合成を可能にする基礎として,六員環を反転させる最小限の要因を明らかにした。また,反転糖を含んだエラジタンニン合成の原料となる,位置選択的にベンジル保護したグルコースの合成法開発を行った。 すなわち,グルコースの2,3,4位に嵩高いシリル保護基であるイソプロピルシリル基を導入すると,グルコースの環立体配座はツイストボート型の反転糖となり安定化する。また,そのツイストボート型の立体配座が,グリコシル化反応に於いてα面からのアルコールの接近を効率よく妨げ,その結果としてベータ選択的な反応を引き起こすことを明らかにした。 一方,トランス・シクロヘキサンジオールに嵩高いシリル基,すなわちTBDPS基,TIPS基,あるいはTBSのいずれを導入しても,結晶状態では反転糖と同様のアキシアル置換基が多い方のイス型で安定に存在することを明らかにした。本研究は,環反転を起こさせる最小限の要因を追求したものである。 また,水酸基をフルベンジル化したメチルグルコシドを酸性条件で処理すると,ベンジル基が段階的に,かつ決まった順序で脱離することを明らかにし,その結果を基に,反転糖を含んだエラジタンニン合成の原料となる,1,3,6-tri-0-acety1-2,4-di-O-benzyl-D-glucopyranoseの実用的な合成法を確立した。
|