Research Abstract |
50年以上にわたって,海産性大型緑藻頬の葉状体形成因子の追跡が行われ,2005年に至ってBacteroides phy.に属するZobellia uliginosaなどの活性株の培養液からThallusinが単離,構造決定された.Thallusinは非常に活性が強く,マキヒトエを使ったアッセイ系では最少有効濃度は1ag/mLと云う驚異的な低濃度で,アナアオサやボウアオノリに対しても葉状体形成活性を発現する.本研究者等はさらに一定量のThallusinを確保して詳細な生物活性試験を展開すること,並びに類縁体の活牲試験を行うことを目的に,独自のオレフィン環化反応剤であるHg(OTf)_2を活用した炭素骨格の構築と,鈴木カップリングによる芳香環の導入を基軸として,ラセミ体の全合成研究を展開した.ホモファルネシルアセテートのHg(OTf)_2・PhNMe_2による環化生成物を,LiAlH_4で処理して二環性化合物をオレフィンの位置異性体混合物として収率94%で得た.アセチル化の後5mol%のHg(OTf)_2を触媒として,オレフィンの異性化を検討し,トルエン中,2時間の室温での反応で,四置換オレフィン体を与える事を見出した.アルデヒドに導き,グリコール酸誘導体と縮合させ,カーボネート保護体として,BF_3・Et_2Oによりエーテル環を構築した.エノールトリフラートに変換後,鈴木カップリングによりピリジン環を導入し,TBSを切断して,酸化,エステル化により14を導き,さらにCOを挿入してトリメチルエステル体とした.これは天然物由来のトリメチルエステル体と一致した.アルカリ加水分解して導いた(±)-Thallusinはマキヒトエの葉状体形成活性を示した.また,水銀トリフラート触媒反応を様々に工夫し,多くの有用な新反応を開発した.これらの研究成果は9編の学術論文,3編の総説,22件の学会発表,及び7件の招待講演において発表してきた.
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