2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18033009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大越 慎一 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (10280801)
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Keywords | 化学的刺激応答型磁性体 / ナノポーラス錯体 / シアノ架橋型金属錯体 / アルコール蒸気応答 / 分子認識 / 強磁性 / ヤーン・テラー / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究課題では、化学的刺激(湿度、ガス吸着、有機分子抱接、イオン交換など)に応答する新規機能性材料の化学的合成を目的としている。本年度は、ウルトラミクロ孔(〜3Å)を有するオクタシアノ錯体Cu_3[W(CN)_8]_2(pyrimidine)_2-8H_2O(CuWprm)のアルコール蒸気(1-プロパノール、メタノール、エタノール)応答性を検討した。 CuWprm錯体の結晶構造は、斜方晶系(Ibam)であり、CuとWがシアノ基で交互に架橋された3次元構造をしている。c軸方向には1次元チャンネルがあり、水分子を抱接している。CuWprm錯体を室温で1-プロパノール(PrOH)蒸気にさらすと、試料の色が緑色から黄茶色に変化した。得られた錯体の組成はCu_3[W(CN)_8]_2(pyrimidine)2・3/2PrOH・9/4H_2O(CuWprm-・PrOH)であり、その後室温で飽和水蒸気にさらすことで、元の組成に戻った。CuWprm・PrOHの結晶構造は斜方晶系(Pmmn)であり、1次元チャンネル内にはPrOH分子が包接されていた。また、Cuの配位構造が6配位八面体(CuWprm)から5配位四角鑞冓造(CuWprm・PrOH)に変化することがわかった。CuWprmは9.5Kで強磁性転移するが、一方、PrOH蒸気に応答させて得たCuWprm・PrOHの強磁性転移温度は12.0Kと上昇した。また、この磁気特性変化は可逆的であつた。CuWprmとCuWprm・PrOHの磁気特性の違いは、Cuの配位構造が変化することで、Cu-W間の反強磁性的相互作用の大きさが変化することによると考えられ、これは分子磁場理論を用いた計算からも支持されている。さらに、CuWprm錯体はメタノールおよびエタノール蒸気にも応答して、結晶構造および磁気特性が可逆的に変化することを見出している。
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