2006 Fiscal Year Annual Research Report
動的らせん高分子の不斉増幅現象を利用した不斉配位空間の構築と機能発現
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18033020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 名古屋大学, 高等研究院, 特任講師 (90303669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 一英 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助手 (00362286)
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Keywords | らせん / 光学活性 / 誘起円二色性 / 不斉増幅 / 不斉合成 / ポリフェニルアセチレン / ペプチド / 高分子触媒 |
Research Abstract |
らせん高分子の構築と制御は、生体高分子を模倣するという興味だけでなく、材料科学や触媒科学、分析化学の分野における幅広い応用の可能性もあり、世界中で活発に研究されている。一方、ポリアラニンやポリロイシンなどのポリ(またはオリゴ)ペプチドがカルコンなどの電子不足なアルケン類(α,β-不飽和ケトンなど)のエポキシ化反応において高い不斉選択性を示すことが報告されている。そこで本研究では、ポリフェニルアセチレンの側鎖にオリゴペプチド鎖を導入した光学活性なヘリカルポリアセチレンを合成し、不斉エポキシ化反応の高分子不斉触媒として応用可能かどうかについて検討を行った。アラニンとアキラルなグリシン残基からなるオリゴペプチド鎖を側鎖に有する6種類の光学活性フェニルアセチレン誘導体を合成し、ロジウム錯体を用いて塩基性の水溶液中で重合を行なうことにより、立体規則性(シス-トランソイド)の高い水溶性のナトリウム塩型のポリマーを高収率で得ることができた。水中で円二色性(CD)スペクトルを測定したところ、いずれのポリマーも主鎖の共役二重結合の吸収領域に強い誘起CDを示したことから、これらのポリマーが一方向巻きに片寄ったらせん構造を形成していることが示唆された。これらのポリマーおよび対応するモノマーを触媒に用いて、カルコンのエポキシ化反応を行なった。いずれのポリマーを用いた場合にも、明確な不斉選択性が観測され、側鎖のペプチド鎖の重合度が増加するにつれ、不斉選択性が増加する傾向が見られた。また、アラニン残基の増加とともに不斉選択性は増加し、アラニン三量体を側鎖に有するポリマーを用いた時に最も高い不斉選択性が発現した。一方、対応するモノマーを触媒に用いた場合には、反応は進行するものの、明確な不斉選択性はほとんど観測されなかった(<2%ee)。これらの結果から、単独では不斉選択性を示さないオリゴペプチド鎖をポリアセチレンの側鎖に導入することにより、不斉選択性が発現することが示された。したがって、ポリマー主鎖が形成する一方向巻きのらせん構造が、不斉選択性の発現に重要な役割を果たしている可能性があるものと考えられる。
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