2006 Fiscal Year Annual Research Report
内部に機能性分子を包摂したポルフィリンナノ集積体の創成
Project/Area Number |
18033033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小島 隆彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教授 (20264012)
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Keywords | ドデカフェニルポルフィリン / 機能性π空間 / 分子包摂 / ヘテロポリ酸 / ポルフィリンジカチオン / 光電子移動ダイナミクス |
Research Abstract |
モリブデンーポルフィリン錯体とヘテロポリ酸が、配位結合により直接結合した複合集積分子を合成した。ポルフィリン錯体として、サドル型[Mo(DPP)(O)(H_2O)]^+と平面型[Mo(TPP)(O)(ClO_4)]を出発原料とし、ヘテロポリ酸(POM)として、[Pw_<12>O<40>]^<3->、[SiW_<12>O_<40>]^<4->、[BW_<12>O_<40>]^<5->のテトラ(n-ブチル)アンモニウム塩を用いた。それらの反応を酢酸エチル-アセトニトリルまたはジクロロメタンーアセトニトリル混合溶媒中で反応させて、複合集積分子を得た。得られた化合物に関して、紫外可視吸収及びMALDI-TOF-MSスペクトル、及び電気化学測定によりキャラクタリゼーションを行った。その結果、DPP錯体の場合、[{Mo(DPP)(0)}_2(POM)]という2:1錯体が形成され、TPP錯体と[SiW_<12>O_<40>]-<4->及び[BW_<12>O_<40>]^<-5>とを反応させた場合、[{Mo(TPP)(O)}_3(POM)]という3:1錯体が形成されることがわかった。これは、サドル型歪みを有するDPP錯体の立体効果により、ケギン型POMが包摂され、配位するDPP錯体の数が規制されているのに対し、平面性TPP錯体では空間的余裕があることを示唆している。 一方、結晶状態で電子供与体を包摂したポルフィリンナノチャンネルを形成する[H_4DPP]Cl_2に関して、アセトニトリル中での分子間光誘起電子移動に関するダイナミクスについて研究を行った。アセトニトリル中での[H_4DPP]^<2+>の1重項及び3重項励起状態の寿命は、それぞれ1.5ns及び22μsと決定した。これらの値は、平面型ポルフィリンのそれらの値よりかなり小さく、励起状態の緩和が環のひずみ緩和により素早く起こることを示唆している。また、8種類の電子供与体から[H_4DPP]^<2+>への光誘起電子移動における反応速度のドライビングフォース依存性から、その再配列エネルギーを1.73eVと見積もることが出来た。これは平面性ポルフィリン化合物のそれらに比べて大きく、電子移動前後の構造変化が大きいことを示唆している。これらの事実は、[H_4DPP]^<2+>は電子移動反応を行うことに不利であるが、結晶状態では相互作用しているゲスト分子からの電子移動は大きな構造変化を経ずに進行することを示唆している。
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