2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムタンパク質のヘムポケットを配位空間に利用した新しい機能性触媒の開拓
Project/Area Number |
18033035
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 高史 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20222226)
|
Keywords | ミオグロビン / 西洋わさびペルオキシダーゼ / 酸化反応 / ヘム / ポルフィセン / コロール / 配位空間 |
Research Abstract |
本申請研究では、ヘムタンパク質のヘムポケットをユニークなナノ配位空間と位置づけて、この柔軟かつ緻密な天然の配位空間内に新しい金属錯体を構築し、得られた生体金属分子について、その錯体物性の制御、反応活性種の形成、さらには人工金属酵素としての応用を図ることを主目的としている。具体的には、本年度はアポ化した(天然のヘムを除去した)タンパク質に対して、反応性に優れた人工ヘムをヘムポケットに挿入することにより、天然を凌駕する酸化酵素の構築を以下のように行った。 1.西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)に対して、天然のヘムよりも活性の向上が期待できる人工補欠分子(金属錯体)を設計・合成し、HRPに挿入して、構造と反応性を評価した。特に、鉄ポルフィセンをHRPに挿入した再構成タンパク質では、天然のHRPにくらべて、チオアニソールの酸化反応が10倍加速した。また、再構成HRPでの過酸化水素との反応で、compound I, compound IIに相当する活性種の検出に成功し、詳細な動力学的考察も実施した。 2.本年度は、ポルフィリン類縁体であるコロール配位子にも初めて着目し、人工補欠分子としてのコロール鉄錯体の合成と、コロール鉄錯体を有する再構成ミオグロビンを調製した。この再構成タンパク質は、天然のミオグロビンにくらべ、約150倍のペルオキシダーゼ活性を有することを明らかにし、今後有望な補欠分子であることが示された。
|