2006 Fiscal Year Annual Research Report
低分子ゲルをマトリクスとする遷移金属錯体の活用と機能化
Project/Area Number |
18033040
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 典史 九州大学, 大学院工学研究院, 助手 (10346819)
|
Keywords | 低分子ゲル / 自己集合 / リン光 / 導電性高分子 / 遷移金属錯体 / 電界電子放出 |
Research Abstract |
本研究は低分子ゲル化剤に遷移金属錯体を組み込み新現象・新材料の創製を目指すことを目標としている。生体様の高度な分子プログラミングにより設計される低分子ゲルは、一次元状の分子組織体が絡み合って生成する三次元網目状構造内に溶媒分子が捕捉されて溶媒分子が流動性を失った結果生成する柔軟応答空間であることから、以下のような特徴を有する。1)自己集合性分子組織体により構成されているため、加熱.冷却による解離・会合が可逆的に起こる。すなわち、熱可逆的なゾル-ゲル相転移を示す。2)低分子ゲル内ではアスペクト比の高い一次元ナノファイバーが生成している。3)弾力を有し、加工性に富むゲル状材料を与える。一方、遷移金属錯体は可視領域に特徴的な色調を持つものが多く、物質変換の鍵となる化学触媒能、酸化還元活性など、機能性分子素子として有用な構成要素である。これらの特徴に組み合わせ、"配位結合性低分子ゲル化剤"の概念のもと以下の成果を得た。 低分子ゲルを鋳型としたポリジアセチレンの有効共役長制御 ジアセチレンをコアに有する低分子ゲル化剤を合成した。水素結合などで一次元状に集積した24量体の再安定構造を求めたところ、分子構造内のアルキル鎖スペーサーの炭素数の偶奇により得られる一次元状集合体の平面性に著しい違いが生じることが予測された。実際に炭素数が3〜8のものを合成してゲル内での重合を行ったところ、得られたポリジアセチレンの色調に顕著な差が現れ、有効共役長に明確な偶奇性が見られた。さらに得られたポリジアセチレン繊維の電界電子放出能を測定したところ、上述の偶奇効果はturn-on電圧に反映されていることが明らかとなった。 金属錯体を導入した低分子ゲル化剤の発光・電界電子放出挙動 キノリノール誘導体を配位子として3種類の遷移金属錯体を導入した低分子ゲル化剤を合成した。キノリノール白金錯体は3重項からの発光(リン光)が観測されるが、溶液中では酸素分子による消光が観測される。低分子ゲル中では溶媒の流動性が極度に低下するために、酸素分子による消光が減ぜられた。ゲル繊維中ではゲル化剤分子がπ電子間の強い相互作用を持ちながら一次元状の集合体を生成している。ゲル繊維によって表面修飾されたITO電極を用いた電界電子放出能の観測にも成功した.
|