2006 Fiscal Year Annual Research Report
極低温トンネル分光による単一分子の局所電子状態の解明とガス吸着の影響の考察
Project/Area Number |
18041010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
夛田 博一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (20343741)
荒 正人 大阪大学, ナノテクノロジー・ナノサイエンス研究推進機構, 特任助手 (90419474)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光 / フタロシアニン / 界面準位 |
Research Abstract |
今年度は、銅表面に吸着したコバルトフタロシアニン(CoPc)を、酸素に曝し,酸素の吸着構造や,電子状態の変化を走査トンネル顕微鏡(STM)およびトンネル分光(STS)を用いて78Kで観察した。銅表面には,分子が分子面を基板に平行にして吸着する。極低温下で,酸素を導入すると,酸素は,銅表面のステップおよび分子周辺とともに,分子上にも吸着した。吸着量により,吸着状況が異なることがわかったため,より精密な流量調整が可能なバルブを接続して,最適条件の検討を行った。 一方,金属表面の影響を受けない「孤立した」分子の電子状態を調べるため,銅とフタロシアニン分子との間に絶縁薄膜を挿入することを行った。具体的には,銅(111)表面上に,塩化ナトリウムの超薄膜をエピタキシャル成長し,STMおよびSTSを用いて構造と電子状態を調べた。塩化ナトリウムは,1層目は1単位格子の膜厚で成長した。基板の3回対称性を反映して,3つの方向に沿って矩形の晶癖を持ち,ここの原子はバルクの結晶と同じ格子定数を有する正方格子を形成することがわかった。STS分光では,塩化ナトリウムを成膜するとその膜厚とともに銅の表面準位がシフトすることがわかった。さらに,塩化ナトリウム表面でも,定在波が確認され,銅表面での定在波の波長に比べ,塩化ナトリウム上では,短くなっていることがわかった。その変化量から求めたエネルギーの変化を,表面準位のシフト量とほぼ一致した。このことは,銅と塩化ナトリウムの相互作用が大きく,電子状態に変化が起こっていることを意味し,分子の電子状態を解明する上で重要な知見となった。
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Research Products
(1 results)