2007 Fiscal Year Annual Research Report
極低温トンネル分光による単一分子の局所電子状態の解明とガス吸着の影響の考察
Project/Area Number |
18041010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
夛田 博一 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / フタロシアニン / 酸素分子 / マンガン / 表面準位 |
Research Abstract |
今年度は、金属表面上の有機分子に対するガス分子の吸着の影響を調べた。清浄化した銅(111)表面上に、中心にコバルト原子を配位したコバルトフタロシアニン(CoPc)分子を吸着させ、さらに酸素ガスを極微量導入した後、5ケルビンの極低温で走査トンネル顕微鏡(STM)観察を行った。 CoPcは分子面を表面に平行に吸着していた。CoPcのコバルト部分の高さが0.18nm(CoPc)と0.35nm(02-CoPc)の2種類のCoPcが観察された。酸素ガスを導入しない場合高さが0.35nmの02-CoPcは全く観察されなかったことから、02-CoPcでは酸素ガスが中心金属コバルトに吸着していると考えられる。フタロシア環部分の高さには変化が確認されなかったことから、酸素ガスはCoPcのコバルト部分にのみ結合することがわかった。 金属フタロシアニン分子では、鉄やコバルトといった中心金属部分に酸素ガスが吸着することが知られているが、吸着状態を単一分子レベルで直接観察した研究例は皆無である。本研究では、酸素ガスがコバルト原子上に吸着したフタロシアニン分子を単一分子レベルで実空間観察することに初めて成功した。また、酸素ガスは中心金属部分のみに吸着し、他の部位へは吸着しないことが明らかになった。 また、基板の磁気構造が有機分子へ与える影響を調べる際に、磁性表面作製技術が必要となる。そこで金表面上へ磁性材料マンガンを蒸着し、STM観察と走査トンネル分光(STS)を行った。STM像では√3×√3構造が確認されたことから、MnAu_2表面合金が形成されていると考えられる。この表面でSTSを測定したところ、占有準位側にマンガン3d電子の多数準位および金の表面準位が現れ、非占有準位側にはマンガン3d電子の少数スピンの準位が現れることがわかった。また、マンガンの表面準位と考えられるピークがフェルミ準位に見つかった。本研究によってMnAu_2表面合金の構造と電子状態を明らかにすることができた。
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Research Products
(2 results)