2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18041016
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 浩之 独立行政法人理化学研究所, 川合表面化学研究室, 先任研究員 (80300862)
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Keywords | 表面・界面物性 / ナノコンタクト / 電子状態 / 電界放出 / 光電子分光 |
Research Abstract |
分子の多彩な性質を利用した電子デバイスが実現した場合、ある種の分子は、数十nmで数Vの電圧が印加されるという強電界下で動作することになると予想される。このとき、電極に接合した分子は、電極と電荷の授受を行い電子状態を変化させつつ、機能を発揮するものとなるはずである。本研究の目的は、電極に接合した分子の電子状態が、強電界によってどのように変化するかを、直接的に観測できる新たな手法を立ち上げ解明することにある。 一般的な光電子分光では、上記のような強電界下で電子状態を観測することは困難である。このため、国内外を問わず、電界によって電子状態が変化する様子を直接観測した例は、きわめて少ない。実測定が期待される既存の手法としては、X線吸収分光や、その脱励起過程で起る発光を分光する手法が上げられるものの、大型放射光施設が必要となるため、普及は難しいと思われる。そこで本研究では、電界中にある電極接合分子の電子状態を直接観測できる新たな手法を立ち上げ、電界による電子状態変化を実験的に明らかにすることに挑戦している。本研究課題で提案する測定手法は、電界放出顕微鏡と光電子分光を組み合わせた手法である。測定原理として高電圧を試料に印加する点で、電界を嫌う一般的な光電子分光と大きく異なり、電界中にある電極接合分子の電子状態変化を容易に観測しうるものと期待する。 本年度は、装置の改良に研究の多くを費やした。特に励起光源に関する吟味と高感度な検出系の構築を行い、光励起由来の放出電子検出を試みた。結果として、定量解析には程遠いながらも、光照射による若干の信号増加を観測することができた。今後も、まずは検出機構の最適化および条件出しを行い、定量解析ができるレベルまで装置の改良を施して、次のステップへ進む予定である。
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