2006 Fiscal Year Annual Research Report
ハドロンおよびその励起状態におけるカイラル対称性の役割の研究
Project/Area Number |
18042001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
慈道 大介 京都大学, 基礎物理学研究所, 助手 (30402811)
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Keywords | 理論核物理 / ハドロン物理学 / 量子色力学 / カイラル対称性 / ストレンジネス / ハドロン励起状態 / エキゾチックハドロン / 中間子原子核 |
Research Abstract |
本研究では、量子色力学(QCD)に基づき、ハドロン及ぴその励起状態の性質にカイラル対称性の自発的破れとフレーバー対称性の破れがどのように反映しているかを理論的に明らかにすることを目的としていた。本年度の研究においては、以下の点について新たな知見を得ることができた。 1.最低でも5つのクォークによって構成されているストレンジネス+1を持つΘ粒子をQCD和則を用いて研究を行った。通常のハドロンより多くのクォークをもつエキゾチックハドロンにQCD和則を適用する際の留意点を詳細に議論し、エキゾチックハドロンに対するQCD和則の効率的な方法をあらたに提案をした。また、Θ粒子の質量を計算することでこの方法が機能することを確かめ、Θ粒子が正パリティーを持つことを示した。 2.エキゾチックハドロンの構造について、ハドロンのダイナミクスの観点から研究を行った。エキゾチックチャンネルに対する南部-ゴールドストーンボゾンとハドロン間の相互作用は、おおかたの場合斥力になり、引力の場合でもその強さは束縛状態を作るほどには強くないことを、カイラル対称性とフレーバー対称性に基づき一般的に示した。このことにより、エキゾチックハドロンはメゾンーハドロンの束縛状態ではなく、、別のメカニズム(クォーク多体系の力学など)によって構成されていることがわかった。 3.η中間子原子核の構造と生成反応スペクトルを議論した。N(1535)核子励起状態の核媒質中での質量変化によって、η中間子とN(1535)-ホールモード間のレベル交差がおきて、そのことが生成反応スペクトルに優位な差として見えることがわかった。 1,2の成果については、すでに学術論文に掲載されており、3については論文を執筆中である。
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