Research Abstract |
第2種超伝導の磁場下では磁場は量子化され,量子渦として体系内に侵入する.様々な特異な超伝導体の対関数を同定する試みがあるが,当該課題の下でこの問題に関して新たな考察を行った. 我々の新たに得た知見は次のようなものである.すなわち,超伝導体の磁場下の混合状態での平均状態密度N(E)は元になっている超伝導のギャップ構造とは無関係に常に低エネルギー領域ではエネルギーEの線形からはじまる.つまり,状態密度はV字形をしている. これを証明するために,我々は準古典近似に基づくEilenberger方程式を1)等方的ギャップを持つs波対,2)点状ノード構造,3)線状ノード構造の3種類について渦格子状態で解いた.これは解析的には解けないので,数値計算で求めた.実際,上の3つのギャップ構造に共通に平均状態密度N(E)はV字形をしていることを証明することができた. 実験グループとの共同研究の下に幾つかの物質に対してSTM実験を遂行し,測定された局所状態密度を積分して単位格子当たりの平均状態密度を求めた.その結果は正しく上の理論計算を与えた. このことは磁場下で行われている様々な実験,例えば,核磁気共鳴実験,比熱,熱伝導度等の結果を解釈する際に重要な情報をあ耐える.即ち,通常は上の1),2),3)のそれぞれのギャップ構造に相応して異なる結果を与えると考えて測定を行っているが,実はその解釈には注意が必要である.むしろ,磁場下の実験では対関数の同定は出来ないということである. 次年度に向けて,これを踏まえたうえでどうしたら対の同定がてきるか実験に対する提案を考えて行きたい.
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