2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18043021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 賢介 九州大学, 理学研究院, 助手 (70165017)
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Keywords | HCN / ヘリウムナノクラスター / 超流動 / 分子間力 / ミリ波分光 / 内部回転遷移 / 分子間振動 / ファンデルワールス力 |
Research Abstract |
平成18年度はHCNを含むHeナノクラスターの分子間振動遷移の観測を目指して装置の改良および観測されたスペクトルの帰属解析に向けた理論的研究を行った。 装置に関してはミリ波共振器を開発し感度の初期テストおよび改良を行った。特に多量体クラスターを感度良く検出するため冷却超音速ジェットノズルを設計し開発中である。これにより(He)n-HCNクラスターをn=10程度まで容易に生成できると考えられる。 実験に関しては(He)_2-HCNおよび(He)_3-HCNのHCNの内部回転遷移と思われる吸収が100GHz領域で観測された。帰属解析のため、東大教養の遠藤教授・住吉助教の協力を得て高感度なフーリエ変換マイクロ波分光法によりクラスター全体の回転遷移の観測を試みた。40atmの高背圧をかけた超音速ジェット法によりHe多量体クラスターを生成し、HCNの片側にHeが二個付いた様々な構造を仮定して計1GHzの領域を探索したが(He)_2-HCNのシグナルは観測されなかった。 この事実と観測されたHCN内部回転遷移のパターンから、He-HCN-Heと付いた構造をとっている可能性を次に検討した。この構造をとりHCNがほぼ自由向転している場合には平均的に無極性であり純回転遷移ほ観測されない。He-HCN-HeではHCNが中心に近い位置にあるため錯体軸にHCNを配向させるコリオリ力の大きさはRe-HCNの1/10程度に小さくなる。このためHe-HCNと比べさらに自由回転に近くなり、内部回転スペクトルのコリオリ相互作用による微細構造分裂はHe-HCNの1/10程度になると予想される。観測されている(He)_2-HCNの内部回転遷移と思われる吸収の微細構造分裂はほぼこの程度であるため、現在この推定に基づきさらに詳細な帰属解析を進めている。 理論的な解明のため、まずHe-HCNの分子間ポテンシャルを精度良く決定した。このポテンシャルは過去観測されている内部回転遷移や合子間振動遷移周波数を実験精度で再現する。このポテンシャルと過去報告されているHe2のポテンシャルを用いてHe-HCN-Heの分子間ポテンシャルを2体力の和として近似して検討したところ、He-HCN-HeのHCNの内部回転の障壁はHe-HCNにおける内部回転障壁の半分程度であることがわかった。さらに2個のHeの間をHCNが通り抜ける分子間変角振動のポテンシャルは、ほぼ井戸型ポテンシャルに近い形をしており、HCNが2個のHeの間をすり抜ける大振幅振動を持つことが示唆された。スペクトルの帰属解析にはこの効果を取り入れることが不可欠であり、現在検討中である。
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