2006 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系におけるリング交換がもたらすエキゾティックな量子現象の理論的研究
Project/Area Number |
18043023
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
坂井 徹 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (60235116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 清英 九州大学, 理学研究科, 助教授 (70222205)
岡本 清美 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助手 (40152342)
大塚 雄一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 協力研究員 (30390652)
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Keywords | 強相関電子系 / リング交換 / 量子ゆらぎ / スピン液体 / スピンギャップ |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導やスピンラダー系などの強相関電子系や量子スピン系におけるリング交換相互作用のもたらす新奇な現象を理論的に探索した。主にこれらの系の低エネルギー励起を記述する正方格子t-J模型とハイゼンベルグ・スピンラダー模型に対して、行列の数値的厳密対角化と有限サイズスケーリング及び摂動論の手法を用いて解析した。以下にスピンラダーと正方格子に分けて成果を列挙する。 スピンラダー系 磁場誘起非整合秩序: まず有限系の数値的厳密対角化と共型場理論に基づく有限サイズスケーリングの手法を用いて、磁場誘起朝永・ラッティンジャー液体を特徴付ける、磁場に垂直な反強磁性スピン相関と磁場に平行な非整合スピン相関の臨界指数をそれぞれ計算し、リング交換相互作用が十分大きいときに、この大小関係が逆転する現象が起きることを発見した。この逆転現象が起きる領域において、ラダー間相互作用を考慮すると、磁場誘起非整合秩序を生じる量子相転移が起きることを予測することができる。今後はこの磁場誘起非整合秩序の定量的な磁場中相図を得ることが目標となる。 異方性逆転現象 3本鎖スピンラダーにリング交換を導入した系を摂動論により解析した結果、容易軸タイプの異方性がある場合でも容易面型の臨界相が出現したり、容易面タイプの異方性がある場合でも容易軸型の秩序相が出現する可能性があることを見出した。この現象についても、今後大規模数値シミュレーションにより、定量的な相図の特定を目指す。 正方格子t-J模型 電荷ストライプ 正方格子t-J模型にリング交換相互作用を導入した系について、行列の数値的厳密対角化によって解析した結果、電荷ストライプが生じる可能性があることを、以前の研究により予測していた。これはverticalタイプのストライプだけであったが、本研究により、さらに強いリング交換相互作用が働く場合には、diagonalタイプのストライプが生じることが判明した。これにより、遷移金属酸化物で観測されているふたつのタイプの電荷ストライプのメカニズムが解明できる可能性が出てきた。 なお、本研究のこれまでの成果について議論し、今後の計画を立てるため、3月に福井工業大学において研究会を開催した。
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Research Products
(15 results)