2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子系の量子相におけるスピン相関とフラストレーション
Project/Area Number |
18043024
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田村 雅史 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 副主任研究員 (00231423)
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Keywords | フラストレーション / 量子スピン系 / 三角格子反強磁性体 / Pd(dmit)2 / スピンギャップ / モット転移 / 超伝導 / 圧力 |
Research Abstract |
有機分子[Pd(dmit)_2]は,1個の不対電子をもつ二量体となって種々の陽イオンと塩をつくり,陽イオンによって格子構造が制御可能なスピン1/2三角格子量子反強磁性体を与える.平成18年度の研究課題として,フラストレートした量子スピン系であるこれらの[Pd(dmit)_2]塩のスピン液体相やその周辺に現れる量子相の研究を,磁化率(特に圧力下の)測定を手法として進めた. そのうちの(C_2H_5)(CH_3)_3P塩では,格子並進対称性の破れを伴うスピンギャップ相への相転移をすでに発見していて,これは一次元スピン系のスピンパイエルス相に類似したものが,二次元でもフラストレーションが強い場合に出現することを最初に示したものであり,スピンギャップ相では二量体間にできたスピン一重項電子対が整列している.この物質は加圧によってバンド幅を広げるとモット転移を経て金属状態になり,転移境界付近の低温では超伝導が現れる.そこで本研究では,磁化測定によってこの超伝導の転移温度や第一臨界磁場などの特性を調べ,温度-圧力相図を作成した.この相図は,超伝導の対生成機構とスピンギャップ相の一重項電子対整列に密接な関係があることを示唆している. また上記の(C_2H_5)(CH_3)_3P塩の高温相(フラストレートした常磁性相)の加圧による絶縁体-金属転移では,磁化率に顕著な変化が現れないことを見出した.同様の結果は,反強磁性秩序化を示す(C_2H_5)_2(CH_3)_2P塩でも得られた.これは,強相関電子系のモット転移では,二重占有サイトの数が絶縁相でのゼロから金属相の1/4まで不連続に変化するのではなく,臨界的に変化し,わずかな不連続しか現れないことを意味しており,最近進展しているモット転移近傍の臨界現象の理論による予測に対応している.
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