2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18043025
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 大輔 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 基礎科学特別研究員 (80415215)
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Keywords | 超流動 / 量子渦 / 自由表面 / 二次元電子系 / 移動度 |
Research Abstract |
本研究は、回転超流動ヘリウムに生成される量子渦と超流動自由表面の素励起間における相互作用の様子を実験的に観測するのが目的である。これまで、量子渦のバルクな性質は活発に研究がされているが、自由表面における振る舞いは実験難度の高さもありこれまで行われていない。 本年度は、回転ヘリウム表面に形成した表面二次元電子系の移動度をSommer-Tonner法を用い測定した。静止下における研究より、表面二電子系の移動度は電子液体状態およびWigner結晶状態において表面素励起に非常に敏感であることが知られている。一方、量子渦は自由表面における終端部分において凹みを形成し、また、その密度は回転数により制御できる。量子渦は表面電子系の移動度に対し何らかの影響を与えると推察される。よって静止下の状態と回転下の結果を比較することで渦-表面素励起間の相互作用にアプローチできると考え、実験を行った。しかし、現時点で量子渦に起因する変化は観測されていない。以下に結果の概要を示す。 実験には10^12/m^2の電子密度(飽和電子密度状態)を用い、磁気抵抗測定を行った。試料容器は高精度回転稀釈冷凍機にマウントし、0〜5rad/secまで回転速度を制御した。これによって得られる渦密度は〜10^8/m^2である。電子液体状態およびWigner結晶においておよそ3rad/sec以上でシグナルに変化が見られた。しかし、これらの変化は参照系として測定した常流動ヘリウム3においても観測された。一方、シグナルの変化は冷凍機の傾きに対して非常に敏感であり、かつ条件によっては上記のシグナル変化を再現することがわかった。 これらにより、回転下におけるシグナル変化は量子渦に起因するものではなく、回転自由表面のマクロな変化に対しての応答であることが結論された。
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