2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18043025
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 大輔 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 基盤科学特別研究員 (80415215)
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Keywords | 超流動 / 量子渦 / 自由表面 / 二次元電子系 / 輸送現象 / 表面波 |
Research Abstract |
回転下において超流動Heの循環は量子化され、各々の渦が全て同一の循環を持つ安定な位相欠陥である量子渦として存在する。量子渦は液体自由表面において終端する際にエクボを形成するが、その終端点近傍の状態の詳細は実験の困難さより明らかにされていない。量子渦が形成するエクボは液体表面上に形成される2次元電子系に対し散乱体となり、その移動度に影響を及ぼすことが予想される。加えて、渦芯周りの流れは自由表面に励起された表面波の分散関係に影響を与える可能性がある。よって、回転下において2次元電子系の移動度測定および、表面波(重力波)測定を行なった。実験で制御した量子渦密度の上限は〜10^8/m^2である。 回転超流動He上2次元電子系の移動度測定の結果について述べる。実験に用いた2次元電子密度は〜10^<12>/m^2である。超流動4He上での実験において、回転速度の増加に伴い移動度が減少する様子が観測された。一方、同様の回転速度依存性は常流動3He上でも確認された。このことは観測された回転速度依存性が量子渦に起因するものではないことを示唆する。移動度に量子渦の影響が反映されなかった原因は、4Heの渦一つ一つが自由表面において形成するエクボの大きさが小さい(深さ〜70Å、半径〜4μm)こと、および渦密度が2次元電子密度に対し非常に小さいことに起因すると考えられる。 表面波の実験について述べる。本研究では波長が毛細管長より長い重力波について、共鳴周波数の回転速度依存性を調べた。測定は〜7mKで行なった。この温度では超流動中の粘性成分は完全に無視できる。共鳴周波数は回転角速度の自乗に比例し増加することが明らかになった。この変化は回転流体における慣性波の理論により説明される。一方、定量的には比例係数が古典理論に対しおよそ半分であり、量子渦による何らかの影響を反映していると考察される。
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Research Products
(2 results)