2006 Fiscal Year Annual Research Report
連続的膜厚制御によるサブミクロン超流動ヘリウム3薄膜の量子相転移
Project/Area Number |
18043026
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
斎藤 政通 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 基礎科学特別研究員 (70415165)
|
Keywords | 超流動^3He / P波超流動 / サイズ効果 / ヘリウム / 超流動 / 薄膜 / ストライプ |
Research Abstract |
超流動^3Heは膜厚1μm以下の薄膜になると、p波クーパー対への系のサイズ効果が顕著となるため、バルク系では見られない、異方的秩序変数の新たな本質的側面が顕在化される。その1つとして、空間的に非一様な超流動状態(ストライプ相)が安定な領域が存在すると考えられている。 本研究では、微細加工により作成したくし型電極を使用し、薄膜流動特性の膜厚依存性から、ストライプ相やAB相転移など、系のサイズである膜厚をパラメーターとした相転移の観測を目的としている。くし型電極とは、2つの微細な櫛状の電極により形成された平面展開型コンデンサーである。この電極は微細な構造であるため、電極に発生する電場は基板表面のごく近傍に平面的に集約され、誘電体である^3Heの高感度な静電的制御・測定が可能となる。この手法により1μm以下の薄膜を扱うことができる。さらに、印加電圧により電極への^3He吸着量を調整できるため、^3He膜厚、即ち系のサイズを自由に制御した実験が可能であり、系サイズが異方的クーパー対形成に及ぼす影響の直接観測が可能な実験手法である。 これまでに、0.3〜4μmの膜厚範囲で超流動臨界流の測定を行った。その結果、1μm付近を境に臨界流の膜厚依存性に違いがあることが分かった。これは相境界の予想される膜厚とほぼ一致し、膜厚変化による相転移を捉えた可能性が考えられるが、確証を得るためにはさらなる検証が必要である。 バルク系では、磁場の印加により安定な超流動相の選択ができるため、磁場中での膜厚依存性から薄膜での相転移の検証が可能と考えられる。現在、膜厚変化による相転移を確認するため、磁場中での実験を進めている。
|
Research Products
(1 results)