2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18044001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (30292262)
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Keywords | マルチフェロイクス / 誘電体 / 電気磁気効果 / 軌道の自由度 / モンテカルロ法 / 強磁場 / 磁性体 / フラストレーション |
Research Abstract |
本年度はスピン-格子強結合系として層状鉄酸化物RFe_2O4(Rは希土類金属元素)を対象として、その電子構造、スピン構造並びに磁気誘電現象について理論的な解析を行った。この物質の鉄の平均化価数は2.5価であり、電荷秩序温度近傍で誘電分極が発生すること、これが磁気転移温度近傍で大きく変化することから、スピン・電荷・格子の自由度が強く結合した新規な誘電体であると認識されている。本研究ではまず鉄イオンの結晶場分裂を計算することにより、Fe_2価イオンが2重縮退した軌道の自由度を有することを指摘した。これを元に本物質の電子構造を記述する有効模型の導出を行った。得られた模型は電荷・スピン・軌道の自由度が結合した形であることが示される。この模型をFeO三角格子二重層に対して適用し、平均場近似法並びにマルチカノニカル・モンテカルロ法により解析を行うことで以下の結果が得られた。(1)電気分極は3倍周期の電荷秩序が出現し、これが二重層において電荷の偏りを生じさせるために出現する。この電荷構造は有限温度において他の分極を持たない電荷構造と比べて安定化することが示された。3倍周期構造においては非等価な電荷副格子が2種類存在し、その片方において有効的なクーロン相互作用がほぼ打ち消しているために電荷の熱揺らぎが大きい。このため有限温度においてエントロピーの利得を得やすいというフラストレーション効果に起因していることが明らかになった。(2)3倍周期のスピン秩序が生じる温度以下で電気分極が多く増大することが示された。これは三角格子におけるスピンフラストレーションにより、このスピン構造ではスピン配置が決定されないサイトが存在することに起因している。この結果から、磁場の印加により系のスピン構造のみならず電荷構造や格子構造が大きく変化する電気磁気効果が予想される。(3)軌道自由度はシミュレーションが可能な低温まで長距離秩序を示さず、多くの軌道状態が縮退していること明らかとなった。
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