2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18045017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八尾 誠 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (70182293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大政 義典 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (30301229)
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Keywords | イオン液体 / 表面 / 濡れ / 表面張力波 / 誘電緩和 / マイクロ波 / 音速 / 音波吸収 |
Research Abstract |
「濡れ」は巨視的な現象であるが、「濡れ易さ(wettability)」は、液体と固体基板、さらにその液体と平衡状態にある気体も含めて3相の微視的物性に支配される。このように「濡れ」は、ミクロからマクロまで種々の階層を縦断する現象であるが、その「繋ぎ」としての役割を果たすのが、誘電的性質である。その理由は、量子論的な「電荷のゆらぎ」が、濡れ層の形成を助ける長距離引力を生み出すからである。イオン液体は、カチオン分子とアニオン分子から構成され、さらにその正負イオンの集合がドメイン構造を有していると考えられているため、電荷ゆらぎにも階層構造が予想される。 以上のようなことを念頭において、我々のグループでは、表面張力や表面波など表面・界面に関わる物性測定と同時に、マイクロ波領域での誘電緩和や超音波の音速・吸収測定など、既存の実験技術を駆使してバルクの物性測定も試みている。 まず、イオン液体の自由表面の静的・動的性質を調べるため、de Nouy法による静的な表面張力測定装置及び動的光散乱法(DLS)による動的な表面張力波測定装置を立ち上げた。後者は、液体表面に存在する表面張力波によって散乱された光の時間変動の散乱波数依存性を調べることにより、表面張力波の分散関係を調べる方法である。表面に何らかの強固な構造が存在する場合、表面固有の粘弾性係数を通して表面張力波のスペクトルに影響を与えることが期待される。初年度は、典型的なイオン液体であるButhyl-Methyl-Imedazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(BMIM-TFSI)について測定を行った結果、表面波の分散関係に明瞭な温度変化が観測された。 また、濡れ易さは共存する3相の誘電的性質によって支配されるため、濡れを理解するためには複素誘電関数などバルクの物性測定が極めて重要である。そこで、我々が開発したマイクロ波装置を用いて、共通試料(bmim TFSI)のマイクロ波反射及び透過スペクトルの測定を行なった。測定には、白金と石英を組み合わせた同軸ケーブル状のセルを用いた。イオン液体の物性実験においては、水などの不純物の混入が測定結果に大きく影響する恐れがあるため、本実験では、イオン液体試料を70℃で8時間真空引きした後、そのままセルに導入することにより、水分などの混入をシャットアウトする方法を確立した。
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