2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18045019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長澤 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (50294161)
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Keywords | イオン液体 / 溶媒和 / 電子移動 / 電荷分離 |
Research Abstract |
イオン液体の特性の1つは、電導性を有するということである。通常の極性溶媒の場合、溶媒和状態は溶媒分子の回転拡散によって形成されるが、イオン液体の場合、イオンの並進拡散も寄与すると考えられる。電荷分離により形成する双極子モーメントが大きいと、「誘電飽和」が起きることがある。この現象はMarcusのエネルギーギャップ依存性にも影響をおよぼすとされているが、イオン液体の場合、その効果がどのように影響するかは解明されていない。そこで本研究の目的は、イオン液体の溶媒和ダイナミクスの電子移動反応への影響を明らかにすることにある。 9,9'-ビアントリルはアントラセンを中心で結合させた対称的な構造の分子で、無極性溶媒中では電荷分離反応は示さない。極性分子の存在により対称性が崩れ、はじめて電荷分離を起こす。その速度定数は溶媒和ダイナミクスに強く依存するので、まずBAについてイオン液体中で実験を行うことにした。イオン液体の1-butyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide(Bmim TFSI)中の蛍光はアセトニトリル溶液の場合と同程度の長波長シフトを示すことより、この溶液中でも電荷分離が起こっていることがわかった。過去の時間分解過渡吸収スペクトル測定の結果より、BAの電荷分離状態の吸収は690nmにピークを持つことが知られている。そこで、690nmにおける吸光度のピコ秒時間変化を測定した。その結果、16ps(44%)と140ps(56%)の二つの時定数で過渡吸収が立ち上がることがわかった。これらの時定数はBmim TFSIの溶媒和時間に近い値となった。また、時間分解蛍光スペクトルの測定も行い、この結果を裏付けている。
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