2006 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ時間領域分光法によるイオン液体の局所構造の解明
Project/Area Number |
18045020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩行 正憲 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (10144429)
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Keywords | テラヘルツ波 / フェムト秒レーザー / 磁気光学効果 / イオン液体 / 低振動数モード / 温度依存性 / テラヘルツ分光 / 局所構造 |
Research Abstract |
本研究では、局所構造およびダイナミクスに変化を与える様々な外部パラメータを変化させて、イオン液体の局所構造とテラヘルツ誘電応答スペクトルの相関を調べる。即ち、イオン液体の希釈、温度の変化、外部磁場の印加などにより局所構造を変化させて誘電応答スペクトルを測定する。 今年度は、イオン液体のテラヘルツスペクトルの温度依存性を調べた。固体状態におけるBMIm^+/TfO^-(融点286〜290K)の誘電率虚部スペクトルの温度依存性から、280Kにおけるスペクトルは非常にブロードであり、温度の降下とともにスペクトルが変化することがわかった。特に、120Kよりも低温でのスペクトル変化が著しく、バックグラウンドの吸収強度が減少するとともに、バンドが先鋭化する。それにあわせて、バンドがシフトして複数のバンドに分裂する。これらのテラヘルツスペクトル変化は、固体状態のイオン液体の微視的な構造が大きく変化していることを示している。つまり、イオン液体は固体状態であっても、一般的な固体よりも構造が柔らかいことが示唆される。また、固定ではイオンの並進自由度は凍結しているものと考えられるため、大きな変化を伴わない運動、すなわち、捩れなどの局所的な運動が固体状態でも凍結していないことが示唆される。120Kよりも高温であらわれる非常にブロードなスペクトルとあわせて、これらの結果は、イオン液体の無秩序性、つまり、ガラス的性質を示すものであると考えられる。一番低い振動数領域で観測されたバンドのピーク周波数を温度に対してプロットすると、60Kを中心とした転移現象的な振る舞いが観測されており、ガラスで観測される無秩序-秩序転移に近い現象であることが考えられる。
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