2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子のイオン液体への均一可溶化と新規分析場への応用
Project/Area Number |
18045027
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 雅宏 九州大学, 大学院工学研究院, 教授 (10211921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 典穂 九州大学, 大学院工学研究院, 助教授 (50302766)
丸山 達生 九州大学, 大学院工学研究院, 助手 (30346811)
久保田 冨生子 九州大学, 大学院工学研究院, 助手 (60294899)
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Keywords | イオン液体 / イオン性流体 / 非水系酵素反応 / 酵素反応 / 環境調和プロセス / 環境調和溶媒 / グリーンケミストリー / ナノバイオ |
Research Abstract |
本研究の成果として、有機溶媒の代替溶媒であるイオン液体中においても、生体分子が機能を維持したまま完全に溶解することを明らかにした。本系は,イオン液体中に水をまったく添加しないという点に特徴を有する。本研究では、イオン液体にポリエチレングリコールが非常によく溶けることを見いだし、また様々な分子構造のイオン液体の合成を行った。タンパク質表面に"<し型"ポリエチレングリコールを高密度に導入し、さらに疎水性の高い適切な分子構造を有するイオン液体を溶媒として用いることで、水等の補助剤を必要とせずにタンパク質を、その機能を保ったままイオン液体中に可溶化できることを明らかにした。 さらに,イオン液体に特定のタンパク質のみを移動(抽出)させることができれば、イオン液体は新たなタンパク質の分離場となり得る。我々は、イオン液体にアルキル鎖を有するもの以外に、水素結合能を有する水酸基、工一テル基、ウレア基を導入したイオン液体を種々合成し、モデルタンパク質としてシトクロムc(Cyt-c)の抽出実験を行った。まず、クラウンエーテル系の抽出剤DC18C6がない場合は全てのイオン液体においてタンパク質移動は全く起こらなかった。しかし、DC18C6の濃度が増加するにしたがって、Cyt-cはイオン液体に抽出され、特に、最も親水性の高い[C_2OHmim][Tf_2N]で定量的な抽出が行われた。 特に興味深い点は、抽出されたタンパク質の機能が変化する場合がある点である。イオン液体に可溶化したために、シトクロムcがペルオキシダーゼ活性を発現したことは、イオン液体が酵素機能の改変の場として利用できることを示唆している。一方で、イオン液体中に可溶化した酵素:リパーゼやプロテアーゼは、長期にわたり極めて安定であることも示すことができた。
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