2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いたイオン液体のドメイン構造の検証と磁性イオン液体の構造解析
Project/Area Number |
18045031
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
片柳 英樹 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助手 (00399312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
見附 孝一郎 分子科学研究所, 極端紫外光科学研究系, 助教授 (50190682)
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Keywords | イオン液体 / 光電子分光 / 電子状態 / 磁性イオン液体 / フラーレン |
Research Abstract |
本課題は、イオン液体(IL)の特異的性質の起源を、主に電子構造の観点から明らかにすることを目的としている。 本年度、分子科学研究所の放射光施設(UVSOR)のビームライン2Bに、ILやフラーレン等の難揮発性物質の気相分光を行うことを目的とした真空槽を設置した。この真空槽は、昨年度から「若手研究(B)No.17750023」において設計および製作の一部を開始したものである。この真空槽に、既存の飛行時間型質量分析装置を取り付け、フラーレンを用いて装置の性能を評価した。この予備実験から、本装置で難揮発性物質の正確な光吸収断面積の見積もりが可能であることが確かめられた。さらに、フラーレン類はIL測定の際の「標準物質」として適していることが明らかになった。 また、ヘリウム放電管を光源とする光電子分光装置を開発し、予備実験としてフラーレンの光電子スペクトル測定を行った。従来に比べ高分解能の光電子スペクトルが測定可能であることを確認した。 上記に並行して、課題申請時の計画を拡張し、解離フラグメントの質量選別運動量画像観測装置を考案した。ILが気相で形成するクラスターなどが光吸収の際に解離する様子を観察すれば、その構造や結合に関する知見が得られると考えたためである。撮像および質量選択用電極の配置を計算機シミュレーションにより最適化した結果、炭素原子2個程度の質量を選択し、その並進エネルギーを10meVの分解能で測定できることがわかった。本年度に装置の一部を試作した。 なお、来年度は、各装置の分解能向上のための改良を行い、気相IL(イオン対、クラスター)の形状を反映したスペクトルの構造を探索し、ILのドメインとの関係を調べる。電子状態に関する気相での詳細な測定からは、従来ほとんど知られていない「液体における常磁性」の発現機構についても、有用な知見が得られると考えている。
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