2006 Fiscal Year Annual Research Report
計算科学手法によるイオン間相互作用の精密解析と分子構造と液体物性の相関の解明
Project/Area Number |
18045032
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
都築 誠二 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 主任研究員 (10357527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 益弘 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 副研究部門長 (50358074)
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Keywords | イオン液体 / 分子間相互作用 / 分子動力学 / 液体物性 / 計算科学 / 分子軌道法 / 静電相互作用 |
Research Abstract |
イオン間の相互作用の強さや方向依存性はイオン液体中のイオンの並進運動と回転運動を制御している。従って、イオン間の相互作用の強さや方向性の違いは、イオン導電率などのイオン液体の動的な物性に直接影響を与えている。イオン間の相互作用の詳細が明らかにできれば、分子構造とイオン液体の物性の相関を解明する有力な情報になる。そこで、平成18年度は高精度のab initio分子軌道法を使い、以下のようにイオン間の相互作用の解析を行った。(1)イミダゾリウム系カチオンのアルキル鎖長はイオン液体の物性に大きな影響を与えるが、鎖長が相互作用の強さに与える影響はよく分かっていなかった。そこで相互作用の解析を行い、鎖長は相互作用の強さにあまり影響を与えないことを明らかにした。(2)イミダゾリウムの2位のC-H結合とアニオンの間の水素結合が存在し、イオン液体の構造や物性に影響を与えていると言われていたが、この相互作用の性質は良く分かっていなかった。この相互作用を解析した結果、相互作用の方向依存性が小さく、通常の水素結合とは性質の異なる相互作用であることが分かった。(3)イオン液体による溶媒和について検討するために、ピリジニウムとベンゼンの相互作用を解析した。その結果、中性の芳香族分子間の相互作用と比べ、かなり強い相互作用の働いていることが分かった。(4)この他にFsIとTFsIの相互作用の比較、Liイオンとアニオンの相互作用、F(HF)2,F(HF)3とemiの相互作用についても予備的な解析を行った。 イオン液体の分子動力学シミュレーションを行うための力場の整備を行った。当初、CHARMM力場の拡張を試みたが、液体物性の検討にはLopeらが報告しているOPLS力場を拡張した方がよいことが分かった。そこで分子軌道法で計算した電荷分布、ねじれポテンシャルのデータなどを使い、力場の拡張および精密化を行った。
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