2006 Fiscal Year Annual Research Report
光イオン化分光法によるイオン液体中のイオン・電子の溶媒和エネルギー評価
Project/Area Number |
18045033
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 隆二 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (60204509)
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Keywords | 光物性 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
(1)光電子放出スペクトル測定装置の開発 イオン液体中の分子からの光電子放出しきい値は、放出された電子数を、励起波長を変えながら測定する"光電子放出分光"法によって計測することを計画している。今年度は基本的な装置の組み立てが終わり、予備的な測定を行った。励起光源には、購入した重水素ランプを用いた。大きな信号強度を得るため、集光光学系を導入した。これにより、来年度に本格的な計測を始められるめどがつき、今後改良を重ねながら計測をすすめる予定である。 (2)過渡吸収分光による光電荷分離測定の最適化 イオン液体中に生成したカチオンや溶媒和電子を過渡吸収分光法によって検出する研究を進めた。一般に過渡吸収分光法は感度が低く、イオン化のような過程の検出には不向きであると思われているが、すでにナノモル濃度の希薄溶液での計測が可能な、高感度装置の開発に成功しており、これを用いて計測をすすめることができた。具体的には4級アンモニウム塩系のイオン液体において、ヨウ素イオンの励起によって生じる溶媒和電子の測定に成功した。吸収係数を見積り、溶媒和電子の生成効率、つまり光電荷分離過程の量子収率を0.34と決定した。これはイオン濃度が極限的に高いイオン液体では予想できないほど高い効率であり、イオン液体の性質について重要な知見であると考えている。さらにヨウ素イオンの存在状態を検討するために紫外波長域での吸収スペクトルを測定し、イオン液体中でイオン対を形成している可能性を見いだした。これらの結果は論文として公表した。また、インドールを溶解させた系において、イオン化収率の絶対値測定を行い、さらに励起励波長依存性を計測し、しきい値を求めることを計画した。まず、比較のため水中での測定を行い、論文発表した(J,Photochem.Photobiol.印刷中)。さらにイオン液体中ではインドールのイオン化収率が0.017と水中に比べ非常に小さくなることを見いだした。この違いを溶媒和電子の安定性から予想するモデルについて詳細を検討している。
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