2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18046004
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
稲葉 政満 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 教授 (50135183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 雅人 文化財研究所東京文化財研究所, 修復技術部, 研究員 (10415622)
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Keywords | 和紙 / 手漉き / 機械漉き / 製紙技術 / 長繊維 |
Research Abstract |
和紙製造技術は、長繊維である楮を使用して良質な紙を製造する優れた方法である。短繊維を用いて大量生産する技術として進歩した機械漉き洋紙製造技術を、和紙製造にどのように生かしたかについて研究した。 粘剤を用いた機械漉き和紙は1895年に円網抄紙機を用いて初めて製造された。しかし、楮は長繊維であるために、機械漉きすることは難しく、第2次大戦中の風船爆弾用紙の製造のために、ヘッドボックスを改良して、円網抄紙機での機械漉き楮紙が製造されたが、本格的な製造は1957年に高知で開発された懸垂式短網抄紙機が導入されて以降である。本抄紙機はロールスクリーンがとりつけことで、絡んでしまった楮繊維束を取り除き、抄紙網部をゆっくりと横揺りすることで良好な紙の地合を実現し、薄くて均一なシートを抄紙できるようにした。本機は廉価でありながら、操業性もよく、日本のみならずアジア各国でも大いに利用されている。 長繊維を分散させるための粘剤も1960年頃から合成品が開発された。その後の改良により、合成粘剤が年間を通して安定した効果を発揮するようになり、楮紙の機械漉きへの移行を推し進める原動力となった。 機械漉き和紙製造は過剰原料の処理のための試し抄きから始まり、抄紙機械を用いた新製品の開発に移行し、最後に特定の紙の需要の増大に応じる目的での技術革新により手漉きを超えるような製品の製造に成功した。これは技術の受容と発展の観点から大変興味深いものである。また、長繊維を使って薄くて均一な紙を漉く技術は機能紙作成にも役立つものであり、本研究でまとめる技術的特長は高付加価値な紙製造にも役立つと期待される。
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