2006 Fiscal Year Annual Research Report
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18046006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 光太郎 名古屋大学, 大学院工学研究科, 教授 (30161798)
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Keywords | 戦後日本鉄鋼業 / 技術革新 / 日本鉄鋼協会 / 銑鋼一環生産方式 / 粗鋼生産量 / 高品質鋼材開発 / 薄鋼板 / 自動車用鋼板 |
Research Abstract |
敗戦の壊滅状態から、日本鉄鋼業は半世紀を経ずして世界有数の鉄鋼生産国へと成長した。こうした復興と発展の過程には多くの学ぶべき貴重な知見や経験が潜んでいる。これに関して、本年度は主に、日本鉄鋼協会「鉄鋼対策技術委員会」とその提言に関して調査研究を進めた。 戦後日本の鉄鋼製造技術の発展の指針を与えたのは、敗戦翌年日本鉄鋼協会で作成された報告書『鉄鋼対策技術委員会報告書』であった。鉄鋼協会は、戦後直ちに会長三島徳七東京帝国大学教授のもと湯川正夫日本製鐵技術部長が委員長となって「鉄鋼対策技術委員会」を設置、鉄鋼技術復興の対策を検討した。その結果は僅か半年でまとめられ、1946年春に報告書が公表された。 鉄鋼対策技術委員会の報告書は「鉄鋼生産方式としては銑鋼一貫法が資源の最有効活用が可能で最も合理的且つ効果的製鉄方式である」と結論した。鉄鋼業廃止論から屑鉄平電炉論や銑鋼一貫論などの当時の論議の中で、原料を輸入に頼る日本において副産物の利用や熱エネルギーの有効活用などの利点をもつ銑鋼一貫工場が最適な製鉄方式であると提言し、その上で限られた原料を用いて優良な製品を最も効率的に生産するため生産技術の合理化を徹底的に遂行、鉄鋼品質高級化を促進する技術開発の必要を説いた。この提言の実現を助けたのは、同じく敗戦直後発足した外務省特別調査委員会において、有澤廣巳東京帝国大学教授と幹事大来佐武郎技師が中心となって作成された『日本経済再建の基本問題』に示された問題意識とそれに従った施策であった。国土荒廃を防ぎ、最低限必要な食糧輸入に充当すべき資材と資金を得るため「生産に関する技術を振興することによって日本経済の将来を発展的創造的に建設する要がある」と指摘した。この提言に沿った経済施策が石炭と鉄鋼に重点化した傾斜生産方式や復興金融金庫からの融資などであった。 第二次大戦直後日本鉄鋼協会鉄鋼対策技術委員会が、基礎産業である鉄鋼業の大きな役割を認識して高い先見性と理念をもって提言した鉄鋼技術の戦後復興対策は大きく結実し、世界の主要鉄鋼生産国に成長した。この発展過程で造船向溶接用鋼板、自動車向深絞り用鋼板、高透磁率電磁鋼板など高機能高品質の鋼材が開発され、強い国際競争力を獲得していった。
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