2006 Fiscal Year Annual Research Report
キンカチョウさえずり識別メカニズムの神経回路レベルでの定量モデル構築
Project/Area Number |
18047020
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10276412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 将文 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80198655)
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 生体・生命情報学 / モデル化 / システム工学 |
Research Abstract |
メスキンカチョウ脳内でオスのさえずりがどのように情報処理されているのか調べ、社会適応との関係を明らかにするために研究を進めた。本年度はキンカチョウ脳内情報処理の計算機モデルに関する従来研究について調査し、また実際にメスキンカチョウ脳内での情報表現についてcat FISH法により調べた。 計算機モデルの調査から、従来研究の殆どはオスキンカチョウが固有のさえずりを獲得するためのメカニズムに関する研究が中心であり、メス脳内の情報処理についてはまったく研究されていないことが判明した。またオスキンカチョウ脳内での情報表現には、異なる領野において複数の神経細胞が情報をコーディングするような手法が用いられていることがわかった。またさえずり同士の相違を定量的に扱う方法を確立する必要があることが分かった。 また脳内情報表現を調べるために、最初期遺伝子Arcの脳内発現を蛍光in situ hybridization法(FISH法)により調べることを試みた。この方法は異なるタイミングで与えられた刺激を個別に可視化することができるものと先行研究から期待されるが、トリの音声識別に利用できるかは明らかでない。そこでメスキンカチョウに50分間隔をあけて2種類の異なるさえずりを聴かせた後に、脳を摘出して切片を作製後、Arcに対するFISHを行なった。その結果、聴覚野の一つであるCMM領域で細胞応答を検出することに成功した。この細胞応答には、2種類の個々のさえずりだけに応答する細胞と双方のさえずりに応答する細胞が存在することが明らかになった。 また従来音声認識には関係がないとされていた海馬領域でも細胞応答が観察された。これらの事実は脳内での情報コーディング関する重要な知見であり、計算機モデルを構築するのにも資する。
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