2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会的経験による昆虫本能行動の発達調節とその脳内分子機構
Project/Area Number |
18047023
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
長尾 隆司 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (70113595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田森 佳秀 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 助教授 (00260208)
佐々木 謙 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 講師 (40387353)
村上 準 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 研究員 (80367458)
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Keywords | 行動 / 発達 / 昆虫 / 脳 / 神経ホルモン |
Research Abstract |
クロコオロギの雄は、他の雄に出会うと必ず闘争行動を行う。勝敗はお互いの攻撃性の高さに依存し、攻撃性はそのときのコオロギの内部状態によって様々に変化する。生育環境が発育と闘争行動におよぼす影響を調べるために、飼育状態を集団飼育と単独隔離飼育に分けた。その結果、隔離個体は集団個体に比べ体色が黒く大きく育った。 体重差が200mg以上の場合、体重の重い個体が勝つ傾向が顕著に現れた。集団個体間ではディスプレイ中心の穏やかな闘争が多いのに対し、隔離個体間では接触の多い激しい闘争が頻繁に見られた。体重差を100mg以内にして闘わせ、攻撃性のレベルを7段階に分けて定量化した結果、ふ化後の隔離期間の長いものほど攻撃性が高いことが明らかになった。透明なケースで隔離飼育したコオロギ(Internet cricketと命名)は、集団個体や遮光隔離個体よりもはるかに高い攻撃性を示すだけでなく、集団個体は決して手を出さない雌に対しても同様に攻撃を行った。 Internet cricketの雌に対する攻撃は、成虫になって(羽化して)3日目まで頻繁に観察されるがその後しだいに減少し、羽化後6日目以降はまつたく見られなくなった。集団個体は羽化してすぐには性行動を示さないが、2日半ほどで交尾を完了するようになるのに対し、Internet cricketは2日目までは攻撃はするがまったく交尾ができず、6日半後に交尾できるようになった。 以上の結果から、社会的環境刺激の遮断がコオロギの攻撃性と性行動の発達に強い影響を与えることが明らかになった。このことは、遺伝的に備わっているはずの本能プログラムが環境要因(社会的経験)によって変容することを示しており、行動が社会的な経験を通して発達するというしくみが、行動の適応性を保証するための基本原理として、高等動物だけでなく広く動物共通に組み込まれていることを意味している。
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Research Products
(9 results)