Research Abstract |
本研究では,振動性ニューロンからなるネットワークを用いて多足歩行運動モデルの構築と解析を実施する.研究初年度に当たる平成18年度には,以下を実施した. 振動子結合系を用いて多脚歩行のCPG(central pattern generator)をモデル化した.各振動子は,高次運動中枢から運動制御入力を受けて,各脚の周期運動を制御するもので、本課題では,複素変数で表されるニューロンモデルにより各振動子をモデル化し,その相互結合系である複素Hopfieldネットワークによって脊髄CPGをモデル化した.複素Hopfieldネットワークのうち,その位相についてのダイナミクスが位相振動子結合系となるものを用いることで、CPGにおける位相ダイナミクスの解明を目指し,以下を確認した. 1.二脚歩行に対して,一対の振動子系を用いてCPGをモデル化し,高次中枢からの制御入力に相当する一定入力の強度に応じた,歩容のパターンを解析した.数値計算により,左右脚への入力強度差に応じていくつかの特徴的なパターンが確認された.それらは,Fitzhugh-Nagumoモデルを用いたより複雑なCPGにおいて見られた結果と一致するが,それはまた,パーキンソン病による不規則な肢間協調の臨床データとも合致することが報告されている.確認されたパターンは,対称な逆位相,非対称な一定位相差および振動数引込みの破れの各パターンだが,それらはHopfieldネットワークのエネルギー関数の存在条件や,位相振動子系の引込み条件から理解でき,制御入力による振動数の変調が本質的であることが分かった. 2.四脚歩行に対して,四つの同一振動子を単純な対称性で結合してCPGをモデル化した.C_2対称性をもつ環状結合を与えた系について,パラメータ空間におけるウォーク,バウンド,プロンク,トロットやペースの各歩容の存在範囲を確認した.
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