2006 Fiscal Year Annual Research Report
人工細胞の環境に対する応答および機能性人工細胞の構築の研究
Project/Area Number |
18048020
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山崎 昌一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70200665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 一世 千葉大学, 理学部, 教授 (90114248)
伊藤 忠直 京都大学, 低温物質科学センター, 助教授 (90093187)
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Keywords | 生物物理 / ナノバイオ / 一分子計測 / 巨大リポソーム / 単一GUV法 / 人工細胞 / アクチン / フィラミンA-ゲル / 抗菌性ペプチド |
Research Abstract |
1.アクチンやアクチン/フィラミンA-ゲルは、細胞の力学応答や浸透圧応答で重要な役割を果たしている。したがって、人工細胞の構築においても、それらのメカニズムを解明することは重要である。我々は、すでにオスモメーターを用いた実験より、アクチンフィラメントが浸透圧に基づく水の流れを抑制し、アクチン/フィラミンA-ゲルが水の流れを完全に止めることを見出している。本研究では、この現象を非平衡の熱力学を用いて解析し、浸透圧に共役してアクチンフィラメントの化学ポテンシャルが増大し、その結果アクチンフィラメントを含む水溶液の水の化学ポテンシャルが減少することを見出した。このことにより、上記のアクチンフィラメントの浸透圧応答に対する実験結果を合理的に説明できる(J.Phys.Chem.B, 110, 13572, 2006)。 2.単一GUV法を用いて、抗菌性ペプチドのマガイニン2と脂質膜の相互作用に対する膜の表面電荷密度の効果を研究した。負の電荷を持つジオレオイルポスファチジルグリセロール(DOPG)と電気的に中性のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)の混合膜で、30mol%から60mol%までDOPGの濃度を変えた膜のGUVを作成し、マガイニン2との相互作用を調べた。その結果、どの膜でもマガイニン2は脂質膜中にポアを形成したが、DOPGの膜内濃度が減少するにつれて(つまり膜の表面電荷密度が減少するにつれて)、ポアを形成するのに必要な水溶液中のマガイニン2の濃度は大きく増大した。この実験結果の解析より、膜に結合したマガイニン2の濃度がポア形成のしやすさを決定することが示唆された(投稿準備中)。 3.緑茶カテキンは抗菌性活性があり、PC膜のリポソームから蛍光プローブの漏れを誘起することが知られているが、そのメカニズムは不明であった。単一GUV法を用いて、カテキンの一種であるエピガロカテキンガレートとPC膜の相互作用を調べた結果、リポソームの破裂が漏れの原因であることがわかり、さらにその破裂のメカニズムを解明した(Biophys.J.92, 3176, 2007)。
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