Research Abstract |
血管内皮前駆細胞(EPCs)の特異的機能を解明する目的で臍帯血または末梢血より分離培養したEPCsを用いて,成熟血管内皮細胞(ECs)と比較検討した.EPCsの培養は,臍帯血および末梢血より既報に従い濃度勾配法により単核球を分離し,ファイブロネクチンをコートしたディッシュ上で,内皮細胞条件下で培養した.1週間培養したEPCsは,フローサイトメトリーを用いて,CD31陽性、CD45陰性、KDR陽性,Tie-2陽性により同定した.位相差顕微鏡を用いた観察では,EPCsはラインを形成し,一部のラインは平行に配列していた.こうしたライン形成はECsにおいては,全く認められなかった.アクチンフィラメントは,EPCsにおいて不規則に配置し,所々でラメリポディアおよびフィロポディアが観察されたのに対し,ECsではストレスファイバーが明瞭に認められた.強焦点レーザー顕微鏡を用いた検討では,ライン形成においてアクチンフィラメントが垂直に直線上に配列していることが確認された.さらにビンキュリンとアクチンフィラメントの二重染色では,ECsにおいてビンキュリンを伴うストレスファイバーが観察されたが,EPCsではビンキュリンは認められず,ストレスファイバーは形成していなかった.こうした結果は,EPCsがECsとは全く異なった細胞骨格を持つ,非常に遊走能に優れた細胞であることを示している.またライン形成についてはEPCs特異的な特徴であり,EPCsの配列認識能はEPCsのもつ優れた血管形成能に寄与している可能性が高い.DNAマイクロアレイを用いたEPCsとECsの比較では,相対比3以上,有意差0.01未満の遺伝子が475個特定された.現在,細胞骨格系を中心にさらに詳細に検討中である.
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