2007 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞および初期胚特異的に見られるセントロメア領域のDNA低メチル化について
Project/Area Number |
18051004
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山縣 一夫 The Institute of Physical and Chemical Research, ダノム・リプログラミング研究チーム, 研究員 (10361312)
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Keywords | 生殖細胞 / DNAメチル代 / セントロメア / エピジェネティクス |
Research Abstract |
多細胞生物において生殖細胞は未来永劫自身の遺伝情報を連続させることの出来る唯一の細胞であり、その点明らかに他の体細胞とは異なった役割を持つ。しかし、体細胞も生殖細胞も同じゲノム配列を持つことから、生殖細胞に見られる数々の特異性はゲノムのエピジェネティックな修飾によるところが大きいと考えるのが自然である。これがひいては生殖細胞特異的な遺伝子発現パターンを生み出し、細胞のアイデンティティを形成するのであろう。しかし、これまでに生殖細胞系列特異的なエピジェネティックな特徴は見出されていない。そこで申請者はマウス生殖細胞系列特異的なDNAメチル化パターンの探索を行った。マウス染色体セントロメア領域に存在するリピート配列のDNAメチル化状態について、ライブセルイメージングやサザンブロット分析、バイスルファイト分析を行ったところ、調べた限り全ての体細胞で高メチル化状態であったのに対し、雌雄始原生殖細胞から配偶子、受精を経て着床期の胚に至るまでの一連の生殖細胞系列においては常に低メチル化状態に保たれていた。着床後の胚で徐々にセントロメア領域に新規のメチル化が引き起こされ、体齢10.5日以降の始原生殖細胞において劇的に脱メチル化することが明らかとなった。セントロメア領域は全ゲノムの約3.5%を占める大規模な染色体領域であり、その領域の特異的な低メチル化状態が生殖細胞系列のアイデンティティーを規定する「エピジェネティックメモリー」として機能していると考えられた。一方、体細胞核で構築されたクローン胚では胚盤胞期に至るまでセントロメア領域が高メチル化状態(体細胞型)で保たれていたことから、この領域のリプログラミング不全がクローンで見られる発生異常の原因になっている可能性が考えられる。
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