2006 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞における細胞容積制御を介したインスリン抵抗性発症メカニズムの解析
Project/Area Number |
18052021
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
高橋 信之 生理学研究所, 細胞器官研究系, 助手 (50370135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 華 生理学研究所, 細胞器官研究系, 特任助手 (20390700)
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Keywords | 脂肪細胞 / インスリン抵抗性 / TNF-α / 細胞容積 / 容積感受性クロライドチャネル |
Research Abstract |
これまでの研究から、(1)脂肪細胞には、細胞外浸透圧変化によって誘導される調節性細胞容積制御機構が備わっていること、(2)脂肪細胞に容積感受性Clチャネルが発現していること、(3)TNF-α単独投与により容積感受性Clチャネルが活性化され、その結果、細胞容積の減少が起こること、(4)インスリンにより誘導されるグルコース取込の上昇が、容積感受性Clチャネルのブロッカーで抑制されること、を明らかにしてきた。これらの結果を踏まえ、平成18年度の本研究では、以下のような実験を行った。 まず細胞容積変化とインスリン依存性グルコース取込促進との関連性を明らかにするため、インスリンにより脂肪細胞の容積が実際に増大するかどうかを、長時間タイムラプス顕微鏡観察により検討した。その結果、脂肪細胞は、インスリン投与により容積を増大させ、その容積増大はNa^+/H^+交換輸送体(NHE)およびCl^-/CO_3^-交換輸送体(AE)の阻害剤により阻害されることが明らかとなった。また細胞容積増大を阻害するイオン交換体の阻害剤投与により、インスリン依存的なグルコース取込の促進が抑制された。このことは、インスリンによる脂肪細胞へのグルコース取込促進作用が、一部、細胞容積の増大に依存していることを示唆している。そこでインスリン依存的なグルコース取込促進作用を抑制するTNF-αのインスリンによる細胞容積変化に対する作用を検討した。インスリンとTNF-αの共投与では、インスリン単独投与で観察された容積の増大は見られず、TNF-αがインスリン依存的な細胞容積増大を阻害していることが示唆された。またこのTNF-αのインスリン依存的容積増大に対する作用は、容積感受性CIチャネルのブロッカーであるグリベンクラミド・NPPBにより消失したため、容積感受性Clチャネルの活性化を介したものであることが予想される。 以上の結果より、TNF-αにより活性化される容積感受性Clチャネルは、インスリン依存的な脂肪細胞の容積増大を阻害することで、インスリンによる脂肪細胞へのグルコース取込促進作用を抑制し、TNF-αによるインスリン抵抗性発症の一因となっていることが示唆される。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Fucoxanthin and its metabolite fucoxanthinol suppress adipocyte differentiation in 3T3-L1 cells.2006
Author(s)
Maeda, H., Hosokawa, M., Sashima, T., Takahashi.N., Kawada, T., Miyashita, K.
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Journal Title
International Journal of Molecular Medicine 18
Pages: 147-152
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[Journal Article] Campest-5-en-3-one, an oxidized derivative of campesterol, activates PPAR-alpha, promotes energy consumption and reduces visceral fat deposition in rats.2006
Author(s)
Ikeda, I., Konno, R., Shimizu, T., Ide, T., Takahashi, N., Kawada, T., et al.
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Journal Title
Biochimica et Biophysica Acta 1760
Pages: 800-807