2006 Fiscal Year Annual Research Report
グリア-ニュ-ロン間におけるD型セリンの分子機構解明
Project/Area Number |
18053004
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 謙二 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幡野 雅彦 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 助教授 (20208523)
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Keywords | D型アミノ酸 / D型セリン / NMDA受容体 / D型アミノ酸分解酵素 / 脳内透析法 / 認知機能障害 / 統合失調症 |
Research Abstract |
NMDA受容体を介するグルタミン酸神経伝達の異常は、統合失調症などの精神疾患の病態に関与していることが示唆されていることよりNMDA受容体拮抗薬フェンサイクリジン(PCP)は、統合失調症の動物モデルとして頻繁に使用されている。我々はPCPの繰り返し投与によって引き起こされる認知機能障害のモデルにおいて、非定型抗精神病薬クロザピンは改善作用を示すが、定型抗精神病薬ハロペリドールには改善作用が無いことを見出した。以上のことより、PCP誘発認知機能障害モデルは新規非定型抗精神病薬の開発に有用であると思われる。 一方、D型セリンはNMDA受容体のグリシン結合部位に作用する内在性調節分子であり、以前我々は統合失調症患者の血清中D型セリン濃度が健常者と比較して減少していることを報告した。D型セリンは主にグリア細胞で合成され、ニューロンに存在するNMDA受容体に作用することが知られている。今回、PCP誘発認知機能障害モデルにおいて、D型セリンの亜慢性(2週間)投与がPCP誘発認知機能障害を有意に改善することを見出した。このことは、D型セリンの投与が統合失調症患者の治療として有用であることを示唆している。 またD型セリンは抹消から投与した場合、抹消臓器での分解などから脳内移行には多量のD型セリンが必要である。D型セリンはD型アミノ酸分解酵素(DAO)によって分解されることが知られているので、DAO阻害薬と併用投与することにより、D型セリンの投与量を軽減することが出来るのではと考え、脳内透析法を用いてDAO阻害薬の併用による脳内D型セリン濃度を測定した。その結果、DAO阻害薬併用により、脳内D型セリン濃度が有意に高くなることを見出した。 以上の結果より、DAO阻害薬とD型セリンの併用投与は統合失調症の新しい治療法として有用である可能性が示唆された。
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