2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経グリア回路網におけるコリンおよびカルニチントランスポーターの機能解析
Project/Area Number |
18053021
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
稲津 正人 東京医科大学, 医学部, 講師 (00297269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 弘志 東京医科大学, 医学部, 兼任教授 (70206986)
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / ミクログリア / コリン / カルニチン / トランスポーター / アセチルコリン / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
1.コリンは、細胞膜の構成成分であるフォスファチジルコリンやスフィンゴミエリンなどの合成に必要な分子であり、細胞膜の構造および機能維持に重要な役割を担う有機陽イオンである。一方、神経伝達物質アセチルコリンの前駆物質でもあり、コリン輸送機構はコリン作動性神経活動の律速段階として機能していると考えられる。我々は、コリン輸送機構を「血液脳関門-グリア-神経回路網における重要な機能として位置づけし研究を進めてきた。最近我々は、Choline transporter-like protein 1(CTL1)がアストロサイトに機能発現し、コリンや有機カチオン化合物の輸送に関与していることを明らか'にした。コリンは血液から供給されることより、微小脳血管内皮細胞へのコリン取り込みについて検討した結果、CTL1を介して脳内に輸送されることを見出した。更に、ミクログリア、オリゴデンドロサイトおよびニューロンにもCTL1が発現しており、中枢神経系における役割が注目される。CTL1はNa^+非依存的にコリンを取り込む性質があるため、Na^+非存在下で取り込まれたコリンがどの様に利用されているか大脳皮質スライス標本を用いて検討した。Na^+非存在下で取り込まれたコリンからアセチルコリンへの変換が確認された。従来、Na^+依存性の高親和性コリントランスポーター(CHT1)のみがアセチルコリン合成に関与していると考えられてきたが、Na^+非依存性のコリントランスポーターCTL1も寄与している可能性が示唆された。 2.カルニチン(Car)は、脂質代謝において不可欠な物質であり、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に輸送する役割を担っている。一方、アセチル-L-カルニチン(ACar)は、Carのアセチル誘導体で、アセチルコリンの合成とミトコンドリアにおけるエネルギー産生へのアセチル基の供給源として働く内因性物質である。ACarは、アルツハイマー病や老人性認知症における記憶障害を改善する報告があり、脳機能維持にきわめて重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、中枢神経系におけるCarおよびACarの生理的役割については不明であり、神経およびグリア細胞へのALC取り込み機構については全く解明されていない。本研究において、アストロサイトにおけるCarおよびACarの取り込み機構について検討を行った結果、アストロサイトにはOCTN2が機能発現しており、CarおよびACarの取り込みに関与していることが明らかとなった。また、カルニチンを輸送基質とするCT2およびATB^<(0,+)>の関与は無いことも明らかとなった。
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