2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子線トモグラフィーを用いた細胞における分子構造の三次元可視化
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18054014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩崎 憲治 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (20342751)
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Keywords | 電子線トモグラフィー / イネ萎縮ウイルス |
Research Abstract |
研究実施計画通り、Pns10チューブルの電子線トモグラフィーを行った。イネ萎縮ウイルス(RDV)を感染させた、ツマグロヨコバイのベクター細胞から切片を作製し、我々が開発を進めている超高圧電子顕微鏡センターの電子線トモグラフィー用透過型電子顕微鏡H-9500SDを用いて、2軸傾斜シリーズを撮影した。得られた画像から、三次元再構成を行い明瞭なチューブルの構造を示すトモグラムを得た。三次元計測から、第一にチューブルの直径はほぼ一定であること、第二に、チューブルの内径は、RDV粒子の最大直径にほぼ等しいことが判明した。RDVキャプシドの原子座標から、低分解能モデルを作製し、セグメンテーションモデルにあてはめたことで、粒子とチューブルがほぼ接することが確かめられた。第三に、ウイルス粒子が、充填されている場所は、必ずウイルス粒子間の距離が一定であることが分かった。ウイルス粒子中心間の距離の測定から、チューブル内でのウイルス粒子間の接触は否定された。また、Pns10によるチューブル構築の仕組みを調べるため、次の解析を行った。Pns10のみをSF9細胞で発現した場合、細胞内で観察されるチューブルと同じ大きさをした、チューブルを形成することが分かっている。このin vitroで再構成したPns10チューブルのネガティブ染色像をフーリエ変換したところ、らせんを示す層線が観察された。よって、細胞内チューブルも主にPns10によって、らせん構造を形成していることが強く示唆された。これらの結果から、我々は、Pns10以外の蛋白質の存在とベクター細胞間におけるウイルス感染のメカニズムを提唱するに至った。すなわち、数少ないウイルスの遺伝子を有効に利用するため、らせん構造を利用し、自己集合によってチューブルを伸張しつつ、RDVをなんらかのタンパク質で取り込んで内壁に固定し、隣接の細胞に運搬するという機構である。
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