Research Abstract |
本研究では,私たちがこれまでに同定した低分子量G蛋白質M-Ras, RhoD, RhoT,およびM-Rasの標的蛋白質として同定したDA-Raf1について,細胞分化,マウス発生過程における形態形成,ならびに筋再生過程におけるこれらの独自の高次機能を明らかにし,さらにこれらのシグナル伝達機構を解明することを目的とする.これまでに次のことがらを明らかにした. 神経成長因子(NGF)によるPC12細胞の神経細胞分化においては,ERKカスケードの持続的な活性化が必要である.NGF刺激によりM-Rasが持続的に活性化され,その結果,ERKカスケードとCREBの持続的な活性化がもたらされた.したがってNGFによる神経細胞分化にはM-Rasが必須の役割をになっていることが明らかになった.一方,10T1/2細胞やMC3T3-E1細胞の骨芽細胞分化の過程において,M-Rasの発現量が増大した.さらにC2C12筋芽細胞や10T1/2細胞にM-Rasを過剰発現させると骨芽細胞分化が誘導・促進された.またRNAiによりM-Rasをノックダウンすると,骨芽細胞分化が阻害された.したがってM-Rasは骨芽細胞分化に不可欠な役割をになっていることが示された. DA-Raf1はRasとM-Rasに結合して,下流のERKカスケードを阻害することにより,Rafの内在性のドミナントネガティブ体として作用した.C2Cl2骨格筋細胞の分化の過程では,DA-Raf1のmRNAと蛋白質が顕著に誘導された.またDA-Raf1を過剰発現させたC2Cl2細胞では,増殖の停止,myogeninや後期筋特異的遺伝子の発現,および細胞融合による筋管細胞形成が促進された.一方,DA-Raf1のRNAiにより,増殖の停止,筋特異的遺伝子の発現,および細胞融合が顕著に抑制された.したがってDA-Raf1はRas-ERKカスケードに拮抗して,骨格筋細胞分化に不可欠な役割をになっていることが示された. RhoTは3T3-L1細胞の脂肪細胞分化の過程で発現量が増大した.またRNAiによりRhoTをノックダウンすると,脂肪細胞分化が完全に阻害された.したがってRhoTは脂肪細胞分化に不可欠な役割をになっている可能性が考えられる.
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