2006 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂における、三量体G蛋白質経路の役割
Project/Area Number |
18057027
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
泉 裕士 独立行政法人理化学研究所, 非対称細胞分裂研究グループ, 基礎科学特別研究員 (10373268)
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Keywords | 非対称分裂 / 細胞極性 / 神経幹細胞 / 三量体G蛋白質 / 紡錘体 / 上皮細胞 / 分裂方向 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
細胞極性等に基づいて異なる姉妹細胞を生み出す非対称分裂は、細胞の多様性を産み出す為に必須かつ普遍的な過程である。ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂は最も研究の進んだモデルシステムだが、その過程で細胞運命決定因子が分裂期に非対称に局在し、分裂軸方位がこれに一致する事で神経母細胞に選択的に分配される。この分裂軸方位の制御には、三量体G蛋白質GαiとそのGDP解離抑制因子Pinsによる、紡錘体への作用が重要だが、その作用機序は不明であった。Pins-Gαiと紡錘体を介在する因子を同定するためPinsの免疫沈降を行った結果、Mud蛋白質の共沈降を認めた。mud遺伝子の変異は、脳構造の異常を引き起こす事が知られていたが、その細胞機能については不明であった。神経幹細胞においてMudはPins-Gαi依存的なapical側細胞膜表層への局在を示した。MudはそのC末領域でPinsと直接結合するが、この領域がapical側に局在するのに十分である事も分かった。変異体の神経幹細胞は、運命決定因子に対する分裂軸方位の異常を示す事より、Pins-GαiはMudとの直接結合を介して紡錘体に作用し、分裂軸方位を規定している事が強く示唆された。結果として変異体では、運命決定因子の等分配、そして神経細胞の運命異常が起こる事も分かった。さらにmud変異体は、中心体形成の異常も示す事より、Mudは分裂方位の制御と中心体形成との、二重の機能を担っていると考えられた。また胚上皮細胞においても、mud変異体は分裂軸方位の異常を示す事より、Pins-GαiそしてMudによる分裂軸方位の規定システムは細胞種に普遍的である事も示唆された。Mudと相同な因子は哺乳類や線虫にも存在し、MudのPins結合部位はそれぞれで高度に保存された領域に存在する事より、この因子による紡錘体の制御は進化的に保存された機構であると考えられる。
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Research Products
(1 results)