2006 Fiscal Year Annual Research Report
DNA複製前複合体構築の分子的機序とその異常に応じたクロマチン動態の変化
Project/Area Number |
18058002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 周右 東北大学, 大学院薬学研究科, 助手 (00216970)
|
Keywords | DNA複製 / DNA複製前複合体 / Cdt1 / Cdc6 / Mcm複合体 / geminin / Cdc7 / Xenopus卵抽出液無細胞実験系 |
Research Abstract |
本研究では、DNA複製前複合体構築に関与するタンパク質の脱制御によるDNA複製の異常について検討することにより、DNA複製制御機構の一端に迫ることを目標とした。Xenopus卵抽出液中に過剰量のCdt1を添加すると再複製が誘発され、同時にcheckpoint機構を阻害することにより過剰な再複製が誘導された。一方、Cdt1阻害タンパク質gemininの欠失変異体のうちCdt1と結合するが機能は阻害しないものを過剰量のCdt1と同時に卵抽出液中に添加した場合にも再複製の増加が観察された。このとき、geminin変異体による再複製の誘発はCdt1のタンパク質分解の阻害や内因性gemininとの競合によるものではないことが確認された。また、このgeminin変異体はcheckpoint機構を阻害しなかった。さらに、checkpoint機構阻害時の再複製では短い新生鎖DNAが蓄積するのに対し、geminin変異体の添加では通常の複製と同程度の鎖長のDNAが蓄積していた。これらの結果より、Cdt1の量をモニターしてDNA複製を抑制する機構が細胞内に用意されていることが示唆された。次に、Cdc6を卵抽出液に添加し、その影響を検討したところ、予想に反して卵抽出液におけるDNA複製の顕著な抑制が観察された。このDNA複製の抑制は、CDKによるDNA複製開始活性化以前の過程への効果であること、ATM/ATRを経由するcheckpoint機構を介するものではないことを示唆する結果を得た。このとき、Mcm複合体のクロマチン結合は抑制されなかったが、Mcm4のリン酸化が顕著に抑制されていた。さらに、Mcm4のリン酸化に関与すると考えられているCdc7のクロマチン結合にはCdc6添加による明確な影響は認められなかったが、このときのCdc7のリン酸化も抑止されていることが観察された。以上より、Cdc6がCdc7 kinase活性を直接あるいは間接的に阻害することによってDNA複製開始を負に制御している可能性が考えられた。
|