2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18058009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳原 克彦 京都大学, 医学研究科, 科学技術振興助教授 (20362543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 玲子 京都大学, 医学研究科, 科学技術振興助手 (50372595)
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Keywords | トランスポゾン / 転移 / ミスマッチ / FRET |
Research Abstract |
Muファージは、自身のゲノムを細菌ゲノムに挿入し、引き続いて起こるDNA複製によってコピー数を増やすファージで、トランスポゾンやレトロウィルスの転移/挿入機構のモデル系として詳細に研究されてきた生物である。Muの転移は、転移酵素であるMuAがMu末端DNA配列に結合して形成される転移複合体(トランスポゾソーム)により引き起こされる。これまでになされた生化学的研究の大半は、転移複合体形成のメカニズムや酵素反応に関するものであり、転移標的の捕捉から転移反応までの制御に関する知見はほとんどない。我々はこれまでに、Muファージが試験管内再構成系において、転移標的としてDNAミスマッチを選り好みすることを見出していた。そこで、ミスマッチに転移する原因を追究することで、トランスポゾンの標的捕捉から転移反応にいたる分子機構を解析しようと考えた。まず、Muのミスマッチ部位への転移機構を解析するため、Muの転移標的DNA捕捉や組換えを蛍光を用いてリアルタイムで検出する系を構築した。これはMu DNAとミスマッチDNAなどを異なる蛍光色素で標識し、両者が接近した場合に起こるFRET(蛍光共鳴エネルギ移動)を指標にして反応を追跡するものである。その結果、転移反応は標的捕捉してから数分かかるような「遅い」反応であること、標的捕捉は転移反応が起きるまで可逆的であること、ミスマッチを捕捉した転移複合体は準安定になること、などが明らかになった。また、転移捕捉時に標的DNAが変性していることが示唆された。これらのことから、転移反応には標的の変性を伴う準安定な標的捕捉複合体の形成が必要であり、変性が容易なミスマッチ部位が選択的に転移標的として用いられると考えられた。
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