2006 Fiscal Year Annual Research Report
真核生物におけるヒストンのアセチル化と染色体分配への関与
Project/Area Number |
18058014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増本 博司 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助手 (80423151)
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Keywords | 染色体構造 / ヒストン修飾 / 細胞周期 / DNA修復 / DNA複製 / クロマチン構造 / 国際情報交換 / アメリカ:カナダ |
Research Abstract |
「研究目的」 出芽酵母ヒストンH3の56番目のリジン(H3 K56)のアセチル化は細胞周期に依存してDNA合成期からG2期まで全ての染色体中のクロマチンに存在しDNA複製時に生じる二重鎖切断修復に関与していることが示唆されている。さらにはヒストンH3 K56の脱アセチル化を行なう因子としてNAD+依存性ヒストンデアセチラーゼHst3およびHst4を同定した。hst3 hst4二重欠損株は温度感受性を示し、染色体分配に欠損が生じることが報告されている。本研究ではまずHst3,Hst4の機能解析を行なった。 「研究成果」 hst3 hst4二重欠損株は細胞周期を通じてほぼすべてのクロマチン中のヒストンH3 K56がアセチル化された状態になる。驚いた事にhst3 hst4二重欠損株はDNA損傷を引き起こす薬剤に対して感受性を示したほか、分裂期における染色体分配にも異常をきたした。これらの結果からDNA合成期にDNA損傷修復に必要なクロマチン構造変化を引き起こすのにはクロマチン中のヒストンH3 K56がアセチル化と脱アセチル化のバランスが必要であると示唆された。さらにはヒストンH3 K56の脱アセチル化が染色体分配に必要なことからも、細胞周期に依存してクロマチン中のヒストンH3 K56をアセチル化、脱アセチル化を繰り返すことのよって、各細胞周期ステージに特異的な染色体構造を維持していると考えられる。(Current Biology Vol.16, p.1280-1289(2006)) 当初アセチル化が起こらないヒストンH3変異,hht1 K56R株は胞子形成に欠損が生じることを報告した。しかし詳細に解析した結果、胞子形成を起こす前にこの変異細胞がアポトーシスを起こして死んでいるために見かけ上胞子形成が起こらないことが示唆された。さらに興味深いことに栄養饑餓状態にhst3 hst4二重欠損株を置いた場合、細胞は静止期に入らず急速にアポトーシスを起こして死滅することを見いだした。染色体中のヒストンH3 K56のアセチル化が栄養飢餓状態において細胞にアポトーシスを引き起こさせる鍵になっているのではないかと考え研究を行なっている。
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